山本山本佳宏 yanmo.jp

風とロック コラムアーカイブ

『○○の君 is クリエイティブ』 (2010年4月号掲載)


不気味の谷

 

BUKIMI!!!!!!BUBKAの表紙を飾るBIKINIのような香りを漂わせつつBUKIMI!!!!!!!不気味と言えば95年の阪神大震災当日に水が全然出なくて僕と父親は車で近くの小学校に行って小学校なら貯水タンクあるから水出るだろってことで門を乗り越えて運動場の横の蛇口ひねったら水が出たのでバケツ2個に水入れてCHAMPCHAMP言わせながら車に乗って何か精神的に落ち込んで無言で家に帰る途中!!!!!!時刻は夕刻!!!!!太陽が血の滴るような赤色をして直径1メートルぐらいのデカさで沈もうとしててあまりの赤さに呆然と見てたらオヤジが一言「……フキミやなー」噛んだ!!!!!!!このすごく何らかの事を暗示して暗示してしょーがないような絶好のシチュエーションでアンタ噛んだ!!!!!117日に噛んだ!!!!!!BUKIMI!!!!正解は!!!そうやって震災初日は終わって行ったけども不気味。

 

1970年にロボット工学者の森政弘って人が提唱した理論らしいけども『不気味の谷』っていうのがあって別にYAWARAちゃんのことじゃないですけども、人間は人間に似ているものを見せられたとき、ホンモノ、あるいは実物との近さが高まるつまり似るにつれて親近感がグイグイ高まっていくけども、ほとんど実物と変わらなくなるある瞬間に、突然嫌悪感を示すと。その好意⇒嫌悪の反応を表すグラフのバコーンという落ち込みがYAWARAちゃんに似ているから『不気味の谷』理論と言うそうです。

カッコイイ!!!!!!!!!!!ネーミングがカッコイイ!!!!!!!!!不気味の谷!!!!!大きいやぎのがらがらどん!!!!!!

ブリキで作ってウィンウィン動くような直方体の集合のようなロボットにはむしろ人間との共通点を見出しやすくてほのぼのしたりするしアシモがアホみたいな踊りをしてるのを見るとニッコリするけれども、科学が発達してきて最近発表人間に似せて作ったロボットがキモくてキモくてしょーがなかったりする事例は多発しているしパッケージのアニメで詐欺るダッチワイフがキモイのも同じ理由かもしれない。近づきすぎると一転して差異が気になり始めるっつーか。人と人にもあるかもしれない不気味の谷。距離が縮まった結果イヤな部分が突然たくさん見えて幻滅が点滅して滅・昇龍拳!!!!!!!!!不気味の谷を飛び越えてお逝きなさい!!!!リアルラブドールの口の中は少し固めのシリコンで作られ歯や舌も実物同様に存在することを確認した上でお逝きなさい!!!!

 

 

何と言いますか、4月号のこの連載が1ページであることを知って何書こうか心が彷徨った挙句、最近僕の中での気になるワード第3位の『不気味の谷』の事をとりあえず書いてみた。3位かい。

 


『月刊誌 is クリエイティブ』 (2010年2月号掲載)



「ダーメだー力が出ないよー」

 

「大変だ!僕カバ夫だけど月マンの顔が汁的なものでしとどに濡れているよ!」

 

「月マンは顔が汁で濡れてしまうと下半身に力が入らないよー」

 

「大変だ!僕カバ夫だけど月マンの顔は汁で濡れ、膝小僧同士がガチガチ当たっているよ!」

 

「月マンは新しい顔がないとウクライナ人のK-1ファイターに勝てないよー」

 

「大変だ!僕はカバ夫だけど今、月マンが戦っている相手は三角筋がすごく発達しているファイターだよ!」

 

「カバ夫を食べたいよー」

 

「大変だ!僕カバ夫だけど志半ばで月マンに食べられてしまうよ!」

 

「早く顔を変えてくれないとカバを食べるよー」

 

「大変だ!僕はカバのカバ夫だけど月マンの新しい顔を早く探さないといけないよ!」

 

「月的な顔がほしいよー」

 

「大変だ!僕カバ夫だけど月マンは何となく月的な感じの物なら顔になるよ!」

 

「月おじさんー」

 

「大変だ!僕カバ夫だけど月マンの顔を作ってるのは月おじさんだよ!」

 

「月的な顔をくださいー」

 

「大変だ!僕カバ夫だけど早く何とかしないと!それっ!バスケットボールだっ!」

 

「手垢ついたボール人の首にハメてんじゃねーよカバ!!!!!!!!!!!!!!!!俺顔濡れてんだぞこの野郎!!!!!!

 

「大変だ!僕カバ夫だけどいよいよ食べられてしまうよ!それっ!月だっ!」

 

「サイズ気にしろカバ!!!!!月マンだからつって月ハメてくるとかナメてんのかお前!!!!!!

 

「大変だ!僕カバ夫だけど月マンに月を投げたらすごく怒っているよ!月的なものということは、えいっ!月刊風とロックだっ!」

 

「ありがとうカバ夫くん!これで元気100倍!月マン!」

 

「大変だ!僕カバ夫だけど月マンがウクライナ人のK-1ファイターの目に指を突っ込んでるよ!がんばれ月マーン!」

 


『好き is クリエイティブ』 (2009年12月号掲載)


すき きらい


家に帰ってドア開けたらエアコンつきっぱなしで靴引っぺがすように脱いで廊下にはチン毛がすごい落ちてて服着たまま浴室飛びこんだら最近掃除してないからタイルがヌルヌルしててボディーソープの先っちょに鼻くそみたいな塊が垂れ下がっててバスタブに座ろうとしたら自分の膝で思いっきりアゴをカチコーンと打ってのけぞったら風呂の栓をぶら下げる留め金で後頭部カチコーンと打って右手で後頭部左手で口を押さえてそっか私ずっと泣きたかったんだす――――――ぅきぃ―――――いーいぃぃーいぃぃいいいいいい―――――――暴れすぎ!!!!!!!!!!ドーンといくぞ隣の部屋から壁をドーンと――!!!!!!!こっちはエロ動画見とんねん静かにせいす――――――ぅきぃ―――――いーいぃぃーいぃぃいいいいいい―――――――うるさいお前!!!!!!!!!フラれたぐらいで歌うな!!!!!!! こっちはエロ動画見とんねん静かにせい!!!!!!!

 

正解不正解とか善悪とかの区別ほど意味のないモノはない。X字型の便座ぐらい意味がない。

この世の人間のすべては好きか嫌いかで成り立ってて好きもしくは嫌いという感情を持たれないモノはこの世に存在してないのと同じ意味になる。

 

いかに好きであると伝えるか。いかに相手に好きになってもらうか。それが広告にとってのすべてだと思うし見え透いた駆け引きや腕つかんで駅前の自転車置き場でガッシャンガッシャン引きずり回されながら迫られる交際によってはもはや相手を好きになったりはしないよってことがダメな広告に対しての感情なんだろうと思うそういえば昔、駅前の自転車置き場で学ラン着た大人しそうな中学生男子の首根っこをつかんで引きずり回しているスーツ姿の黒人を見てKUWABARA KUWABARAの意味を肌で知ったよー。

 

好きか嫌いかの話でいうと僕は2wayという言葉が嫌いです双方向という言葉が嫌いですインタラクティブという言葉が嫌いです。さらに混乱することを言うと言葉が嫌いなんではなくてこういった言葉の意味をよく考えもせず使う人たちが嫌いです。しゃらくさいから嫌いです。

 

頭がキレキレでオシャレで最先端に面白い俺たちが下民に向かって交信を図ってやるぜ。

だからリアクションしてこいよお前ら。

それが双方向ですか。それを双方向と呼びますか。誰かアンタらにライフスタイルを提案してほしいって頼みましたか。糞詰まって当然だろ。TOTOX字便座で張り倒されるぞ。

 

日本の街にはたくさんの思いが24時間飛び交っている。あちこちから次々に発射される矢印。どの矢印をどのように受け止め、どのように反応していくのか。それが正しい双方向の始まり方だと思う。偉そうですね。

 

同じ場所、同じ街、同じ日本に住んでる人間がなぜ対岸に立とうとするのか。なぜ世界を分断するのか。自分は仕事でモノを作る人間であると同時に仕事帰りにモノを買って消費する人間でもあることになぜ気づけないか。

同じ岸に立たないと、どこかへ向かって飛んでいく矢印を見ることはできない。誰かの好きや誰かの嫌いをつかまえることもできない。飛び乗ることもできない。

「抱いてやるから服脱げよ」では、もはやセックスはできない。

 

混ざりたいんです。簡単に言うと。脳みそ混ぜたいんです人と。このキモチ、この衝動が、自分のモノなのか誰かのものなのか自分のやりたい事なのか人のやりたい事なのか自分の発想なのか相手の発想なのかもうグッチャグチャにワケ分からん渾然一体となって進んでいきたいです。それが2wayとか2.0とかとどう違ってどう同じなのかは一切分からないけど僕が放送のみならず目指すのはそういうことですピースピース。何で今Wピースした。

 



『迷惑メール is クリエイティブ』 (2009年11月号掲載)


昨日送ったメール


ああ送らなければ良かったなあああああああああああああぁああああああ!!!!!!!!!!!悔いだけが募りますうううあががががががががががあおおああああああぁああぉおお!!!!!!!!

俺メールとか苦手であんまやんないんだよねとか作家にとってはただの言い訳とかでやっぱ作家はメールも当然上手に書けないといけないとか思うみたいな強迫観念とかもちょっとあったりとかもしますとか。

そりゃ多分偏差値で考えたら山の右側のほうだろうとは思いますけれども上手かろうが下手かろうが夜が明けても来ないものはこないままですメール。そんな当たり前の事実に気づいてGAKU-然としますああ送らなければ良かったなああいいいいいいいいいえええああぁああああ!!!!!!!!!!!悔いだけが募りますうううあギギギギギギギギギ(ゲンはゲンでもはだしのゲン)がががががががあおおああああああお!!!!!!!!

絵文字とかデコメとか使わなくたって文字だけで全て表現できるわとか思っててもメール返ってきてほしいがために平気の平左で目玉のオヤジデコメ全部揃えてチマチマ送ったってああ送らなければ良かったな悔いだけが募ります。

 

ボブ沙汰してます、山本です。連載お休みして申し訳ありませんでした。

 

認知心理学的に言うとメールが返ってこない時の心理状況は『反応の非有効性』と言われててどーいうことかというと良くない状況に身を置いたときに解決手段や回避方法が見当たらないしできそうにないという見通しの暗さのことでございます鉄人自ら取り分けます。鉄人は一旦待たせておいてさらにどーいうことかというと、メールが返ってこないこと自体を不安がってるわけではなくて何かの事態を打開する可能性が超低まっとることが不安なわけで仕事相手のオッサンに送った「今月こそは飲みに行きましょうね」メールの返事が来なかろうがクソにたかるハエのクソ並みにどーだってイイので不安になんかならんし後悔もせんと。好きな女子からリアクションがないと次のアクションへのつながりをどう持てばいいのか全く分からんから不安だと。当たり前のことですか。当たり前のことですよね。つまりは100%自分の中で巻き起こってる不安なので、自分次第で不安を大きくも小さくもできるってことですよね。という話をどこかで読みました鉄人自ら取り分けますいつまで取り分けてんのお前。鉄人にお前とか言っちゃってアレですけど。

 

これは無視なのか躊躇なのか天然なのか計算なのか友だちと相談中なのか彼氏が金属バット持って公園で待機中なのか、来ない返信に向かって妄想を膨らませるのはペットペトヘットヘトになって何でこんな思いをさせられにゃならんのか、今日本に何万人かいるはずの送ったメールの返事を美輪明宏みたいな顔で待ち続けている人たちの不安空気たるや環境問題で、返そう。返事は。返事は返そう。

 

箭内さんは僕のメールを10回に1回ぐらいしか返信しない。贔屓目に見ても7回に1回ぐらいしか返信しない。

抗議したら笑って「返事をしないけど読んだよ、了解したよ、っていうメッセージが無返信には込められている」と言ったダウトオオオオオオオオアアアアアアアオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!って指差したいんだけどな。小指を。ガニ股で。しゃくれながら。半目で。欽ちゃんみたいな声で。生魚の匂いさせて。

返そう。返事は。返事は返そう。

 

一方で僕はかつて箭内さんから”レスポンス力(りょく)”を褒められたことがあって「何時にメールしても異常に返信早いねー」ということでそれは単純に寝ないでPCの前に座ってたってだけ。だけだけどもどんなに些細でもどんなに重要でも変わりなくPCメールっていうコミュニケーション手段はまあ最長で24時間ぐらい間が開いてもいいだろ、だから今受信したけど返信は明日的な暗黙のルールでやってる感じがするんだけどムダじゃね?今送れるんなら送っちゃって終わらせた方が早くね?「A案にしまーす」「やっぱB案でー」「よく考えたらA案でしかないのでA案で」とかリアルタイムでコロコロ変わってもいいから送った方が早くね?と思うんですけど。すぐバッファ取るとかワケの分かんないこと言ってフワフワさせたがるでしょあいつら。すべてのオトナたちは自らに『持ち帰り禁止令』出したほうがいいですよ。もったいつけた大物感UPテクよりもコミュニケーションの往復回数でしょ。

 


『人が考えたテーマ is クリエイティブ』 (2009年8月号掲載)


猫の話をすればいいんですか


うちの祖母が猫を飼ってましたがクーちゃんっつー名前で真っ黒でそれはそれは不吉な猫だったですが子猫の頃は可愛かったですが生き物なので成長するんですが胴----------------------!!!!!!!!!!!

猫の胴が長いのは何となく知ってるつもりでしたけどもあんな長いですか。アメリカ人のチンコより長いですか。以前、どこぞの放送局の番組の打ち上げでプロデューサーが方天戟を振り回してのセクハラ無双を発動して外国人のチンコの話を女子アナウンサーに向かって始めたところその女子アナは「そうなんですデカ過ぎて痛いんですよねー」と言って無双は終息して話は再び猫の胴。クーちゃんのあまりの胴の長さを僕はあまり愛せなかった。スズメのバラバラ死体を僕に見せつける姿も愛せなかった。でもそれ以外は愛してた。

冬になるとコタツの中に入ったまま蹴っても蹴っても全く動かないのでどうやったらこいつは外に出るんだろう邪魔だなーと思って色々考えた結果思いっきりコタツの中で屁をこいてみることにして屁をこいてみたらイヤそうな顔をしてゆっくりと出てきてゆっくりと出てきたから面白かったからちょっと笑ってたらコタツの中心で尿を叫んだケモノでした。

こいたばっかりの屁の匂いを飛び越えてくる尿の匂いをみなさん想像してください。そしてそのまま寝てください。そして起きてください。マジクサ。マジクサ。なんでオシッコしたんだクーちゃん。と思って追いかけようとしたらクーちゃんはすでに祖母に捕らえられていて孫の手の手の反対側に付いているわりと重量感のあるあのゴムボールの方で狭いオデコをパチコ―――――――――――――――――――ン!!!!!!!!!!!!!!ジャックバウア――――――――!!!!!!!!!!!!!次期大統領――――――――――――!!!!!!!!!!!大正生まれってやる時やりますよね。あと猫良く死なねーな。と思った猫の思い出です。

 


『家城啓之インタビュー』(2009年7月号掲載)


今月は久々にインタビューやりましたぞえ――(2009年にまさかの鈴木蘭々)―――!!!書き起こすの大変だったぞえ―――(2009年にまさかの鈴木蘭々)―――――!!!

お相手は、2009年度・吉本ブサイクランキングで栄光の1位を獲得しました、眉毛のない芸人さんであり、SCHOOL OF LOCK!のやしろ教頭でもある、カリカの家城啓之さんでございます!!!!!!!!やった――――――!!!!!

カリカは、2009722()23()、銀座博品館劇場で単独ライブ『しゃべるコント』をやります。僕はカリカのコント大好きだし、応援したくてインタビューしてるし、当日券ちょっとだけあると思うんで、関東在住の方はぜひどうぞ。

先に言っておきますが、僕は家城さんのことを教頭と呼んでますので、以下そんな感じで。

 


『ウィスパーボイス is クリエイティブ』 (2009年5月号掲載)


図書館にて

 

「ヒソヒソヒソヒソ(最近さー見るたびに運命線が短くなってるんだよねー)」

 

「ヒソヒソヒソヒソ(マジで?世界征服無理っぽいじゃん)」

 

「ヒソヒソヒソヒソ(でもさー生命線はグングン伸びてんだよねー)」

 

「ヒソヒソヒヌヒソ(果てしなく続く負け犬人生?みたいな?)」

 

「ヒソヒソヒソヒソ(あっ!今、ヒヌって1回言っただろ!)」

 

「ヒソヒヌヒソヒソ(え?言ってないけど?)」

 

「ヒソヒソヒソヒソ(またヒヌって言った!!!!!しかも半笑いじゃねーかお前!!!!!!)」

 

「ヒヌヒヌヒヌヒヌ(なーに怒っちゃってんのよ。手相気にしすぎだって)」

 

「ヒソヒソヒソヒソ(てめえええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!)」

 

 


『ぶる is クリエイティブ』 (2008年11月号掲載)


アシタカ

 

ヤックル!

 

(ヤックル、こっちを振り向き近寄ってくる)

 

ヤックルよく来たな。よし、向こう行ってていいぞ。

 

(ヤックル、向こうへ行く)

 

ヤックル!

 

(ヤックル、こっちを振り向き近寄ってくる)

 

よーしいいぞ、よく来たな。じゃあ向こうで草でも食ってろ。

 

(ヤックル、向こうへ行く)

 

ヤックル!

 

(ヤックル、こっちを振り向き近寄ってくる)

 

よーしよしよし…何だよ。乗らねーよ別に。出かける用事ねーだろ。向こう行っとけ。

 

(ヤックル、こっちを振り向き近寄ってくる)

 

何だよヤックル、ダラダラ歩いてきてんじゃねーよヤックル。やり直しだよやり直し。

 

(ヤックル、向こうへ行く)

 

ヤックル!

 

(ヤックル、無視)

 

ヤックル!

 

(こっちを振り向き近寄ってくる)

(近寄ってくる)

(近寄ってくる)

 


『シュルレアリスム is クリエイティブ』 (2008年10月号掲載)


ワケわからんことや

 

関西の中途半端な中都市で生まれて育って泣いて笑ってケンカしてケンカしたことはなくて飲めないのに飲んで飲まれて20数年暮らした酒と泪と男と女のうちの男の僕だけども僕は関西というか大阪と言うか生まれた地に愛を感じたことがなくて愛された記憶がないから。故郷に。別に誰が悪いとか膝が悪いとか言ってるわけじゃなくて僕が悪いんだろうけど故郷は愛を与えてくれなくてその代わり僕も愛を与えなかった。人を好きになるってどういうことなのか分からないとかいう子には受け入れられ愛された経験が乏しいのと同じ理由で。好きになられたことがないから好きが歪む。

ボケとかツッコミとかベタとか漫才とかボケとかツッコミとかを人間がウンコするがごとく当たり前のように毎日毎日テレビで見せられて育って当たり前のように受け入れて育ってきたんだけど、思春期を迎えて斜に構え始めてそういうのが嫌いになってボケだのツッコミだの間が良いだの悪いだの街なかでデカイ声でしゃべってる関西人に毎日毎日ウワワワワワ―――――!!!!!!!ってなった。お前らは生まれてから死ぬまで一瞬たりともオモロないんじゃボケがと。思春期の僕。

 

見えないものを見ようとして嫌いなものから逃げようとして僕は望遠鏡をのぞきこまずにシュールという言葉に出会うわけでシュールって何ですか。よゐこの濱口さんがめちゃイケか何かで「シュールっていうのはワケわからんことや!」とネタっぽく言い放ってたのが僕は結構好きでよゐこは確かに僕がもっともっと若いころから関西ローカルの深夜番組で余白の多いコントをやってて僕も余白の多い顔で眺めてたんだけど何か関西シュールの最高峰とか言われてたらしくてシュールって何ですか。ツッコミがないってことですか。ツッコミようがないってことですか。分かりづらいってことですか。笑うポイントを明示しないってことですか。お笑いだけに使う言葉ですか。それともやっぱし、ワケわからんことさえやってたら、シュールなんですか。シュールの反対はベタですか。シュールはベタよりもカッコいいですか。シュールはクリエイティブですか。

 

逃げた挙句すがりついたシュールという言葉を掘ってみようと思った思春期の僕は…思春期の僕って何回も言うの疲れてきたんで略して杜子春でいいですか。杜子春は調べましてシュルレアリスム。フランス語。このすぐに本とかで調べる感じが左脳ばっかし出っ張った坊やの童貞臭さプンヌプンヌでイヤになりますね杜子春。杜子春っていうのは思春期の僕のことです。

 


『才能について』 (2008年8月号掲載)


得意なこと

 

があったことー。 今じゃもー忘れてるのはー。これ以上垂れて流すとお金取られそうなんで紅潮した頬をピカピカに膨らませながら喘ぎながらやめときますけども膨らませながら喘げんのかお前。喘げんのかっつってんの。絶対に熱いうどん冷ますみたいな感じにしかなんないんでしょ?フォフォフフーフォフォフフルーそれで喘いでるつもりなのかっつってんの。絶対アンタなんかよりアタシのほうが上手に喘げるんだからフフォフルルーフォフフルフー一緒!!!!!!!!大体!!!!!!!!

 

BUMP OF CHICKENの『才悩人応援歌』という曲がありましてすごくいい歌なんですけど歌詞書くとお金取られそうなんで歌詞の内容をランニングワイルドでまとめてみますと、

 

・得意だと思ってたことが他の人のほうが得意だったっす。

・平凡だからこそ苦しいんす。

・はいはい。あんたらからしたら頑張ってないみたいに見えるんでしょ。

・期待されるような命じゃないから消えてもいいでしょ。

・でも正直消えたくないっす。

 

才悩人。才に悩む人。幼児性の万能感は社会に触れるごとに喪失していってなんでもかんでも自分が1番じゃないってことをイヤというほど突きつけられて僕らは大人になっていくんだけど最近のオッサンが分析したところによると最近の若者は甘やかされて万能感を保持したまま思春期を迎えてしまって自分が1番じゃないことを免疫のない目ん玉におもっくそグリグリ見せつけられてプチ鬱?みたいな?そんなことになってるらしいですWA。そんな分析はどーでもいいんだけどBUMPのこの曲は時代の川の流れを高みから傍観してキレイに歌いあげたりせずに自分で飛び込んでってる気がして好きでした。orbitalperiodっていうアルバムに入ってる曲なんだけどもアルバムの中で1番好きな歌だったんだけども今は違います。

アルバムがリリースされた直後にとある10代の男子が何を思ったのか僕に向かってキラキラとしたまっすぐな目で「この曲ってまさに先生のためにあるような曲ですね」どこがじゃコラアアアアアアアアアアどういう意味じゃコラアアアアアアアアアア誰が才能なくて悩んどんじゃおんどれボゲエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!!!!!!!!!!!相手が年端も行かぬ虞犯少年であることを忘れてすっかりメートルが上がり切ってしまった的な勝手な理由で僕は『才悩人応援歌』が一方的に好きじゃなくなってしまいましてBUMPのみんなゴメンナサイ読めばお分かりの通り一切気にしていただかなくて結構な感じの理由ですんが何で僕はこんなにも怒ったのかしら。図星を突かれて猛り狂ったのかしら。可愛いだけじゃダメかしら。

不遜を承知で言うと僕は確かに才能についてここ数年悩んでいてそれは前述のアホ男子のご指摘とは逆噴射で、自分で自分にあると思ってる才能をどうやって捨てたらいいんだろと思っててそれぐらい自分にとって才能って存在が邪魔だった。

小さいしマイナーだし世間の人にとっては取るに足らないノイズでしかないんだけど僕は仕事を積み重ねてきて僕のことをキライな人はたくさんいるけど多分才能があると思われていて自分でも才能があると思っていて思えば思うほど不安が増大した。本当は才能がないんじゃないかという不安。才能だと思っている何らかのものがある日消滅してしまうんじゃないかという不安。

自分にはないと思えばツライ。あると思えば不安。才能って何なの。邪魔じゃね?イヤなことばっかじゃん。アホじゃないの?

 

広告が作りたい。音楽をやりたい。でも自分には才能が多分ない。センスがない。相手にされないかもしれない。ダサいとか言われるかもしれない。じゃあ何がしたいのと聞かれたら上手に答えられないかもしれない。才能がないという劣化ウラン弾はいつまでも腸に流れず胃液の中にズッショリと浮いたままで胃が重くてナンバ走りを活用しても重心が前に移動しなくて不安っつーか絶望っつーか立ち尽くし。不安を抱えて憧れて。

 

 



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