ワケわからんことや

 

関西の中途半端な中都市で生まれて育って泣いて笑ってケンカしてケンカしたことはなくて飲めないのに飲んで飲まれて20数年暮らした酒と泪と男と女のうちの男の僕だけども僕は関西というか大阪と言うか生まれた地に愛を感じたことがなくて愛された記憶がないから。故郷に。別に誰が悪いとか膝が悪いとか言ってるわけじゃなくて僕が悪いんだろうけど故郷は愛を与えてくれなくてその代わり僕も愛を与えなかった。人を好きになるってどういうことなのか分からないとかいう子には受け入れられ愛された経験が乏しいのと同じ理由で。好きになられたことがないから好きが歪む。

ボケとかツッコミとかベタとか漫才とかボケとかツッコミとかを人間がウンコするがごとく当たり前のように毎日毎日テレビで見せられて育って当たり前のように受け入れて育ってきたんだけど、思春期を迎えて斜に構え始めてそういうのが嫌いになってボケだのツッコミだの間が良いだの悪いだの街なかでデカイ声でしゃべってる関西人に毎日毎日ウワワワワワ―――――!!!!!!!ってなった。お前らは生まれてから死ぬまで一瞬たりともオモロないんじゃボケがと。思春期の僕。

 

見えないものを見ようとして嫌いなものから逃げようとして僕は望遠鏡をのぞきこまずにシュールという言葉に出会うわけでシュールって何ですか。よゐこの濱口さんがめちゃイケか何かで「シュールっていうのはワケわからんことや!」とネタっぽく言い放ってたのが僕は結構好きでよゐこは確かに僕がもっともっと若いころから関西ローカルの深夜番組で余白の多いコントをやってて僕も余白の多い顔で眺めてたんだけど何か関西シュールの最高峰とか言われてたらしくてシュールって何ですか。ツッコミがないってことですか。ツッコミようがないってことですか。分かりづらいってことですか。笑うポイントを明示しないってことですか。お笑いだけに使う言葉ですか。それともやっぱし、ワケわからんことさえやってたら、シュールなんですか。シュールの反対はベタですか。シュールはベタよりもカッコいいですか。シュールはクリエイティブですか。

 

逃げた挙句すがりついたシュールという言葉を掘ってみようと思った思春期の僕は…思春期の僕って何回も言うの疲れてきたんで略して杜子春でいいですか。杜子春は調べましてシュルレアリスム。フランス語。このすぐに本とかで調べる感じが左脳ばっかし出っ張った坊やの童貞臭さプンヌプンヌでイヤになりますね杜子春。杜子春っていうのは思春期の僕のことです。

 




今さらシュルレアリスム

 

辞書を引くと超現実主義とか書いてあってその和訳の時点で若干間違ってる気がするんですけどもそれは置いといて。20世紀の初頭に起こった芸術運動ですよシュルレアリスム。文学とか絵とかその辺ひっくるめての。あーめんどくさい話になってきたなーコレ。書く人も読む人もダレる時間帯に入ってまいりますが気にせずいきます。

 

超現実とか言うから現実とかけ離れてるコトとか現実ではありえないコトとか思ってしまうわけで、つまりはワケ分からんこと、みたいな解釈につながってってしまいますけども超現実の超は「え?ミカのストラップ超カワイくな?い?」「ウッソー超ウレシイんだけど?。そういうヒトミだってさー、膝小僧が超人面疽じゃーん」「そうなんだよね?アタシの意思とは超無関係にしゃべるんだよね?超ウザ?イ」の『超』で、VERYのことです。すんげー現実ってこと。超スピードの超です。猛とも言える。

あ、せっかくだから全国の10代のみなさん今日から学校で『猛』を流行らせてください。「猛ウケルんですけどー」「猛カワイイ?」「猛虎猛ツヨイじゃーん」コレが2009年の現代用語の基礎知識に載るように頑張りますから杜子春。今の!!!!お前は!!!!思春期じゃ!!!!!ない!!!!!

 

頭の中で発想した何か現実離れしたヘンテコなものを自由気ままに表現することがシュルレアリスムとか超現実主義だと言ってるとしたらそれは主観そのものなわけで、そう思ってる人はちょっと間違いだと僕思ってて現実って何すか。

とりあえず昨日もあって今日もあるものを明日もあると思いこんで生きてることを何となく惰性的に現実って呼んでるだけのポムポムプリンみたいな存在じゃないすか。そこからかけ離れるってどこにかけ離れるんですかね。日本ではモロ主観ってことになってますけど本来は主観つーか好き勝手な思い込みとは逆のものでむしろ客観でオブジェクトで『モノ』そのもの。頭の中で考えたものじゃなくて、ただ単にそこにバコーンとある『モノ』をバコーンと捉えるだけ。シュールっつーのは仮に現実とか名付けちゃって思い込んじゃってるフワフワした中に突然現れるリアルな『モノ』であって現実と超現実の間には乖離どころか境界線もなくて僕らがオモロイとかオモロクないとかの考えをはさむもんじゃございません。むしろ、その客観を何も考えず表現させられている状態こそがシュルレアリスムでございますわけで。

 

 

はいキモイ話終了ー。お笑いなんだから素直に見て素直に笑っとけばいいものをこんな感で本読んだりしてウジウジとウジましく考えていた杜子春はキモ男子そのもので知識はしょせん受け売りでしかなくて血にも肉にもなってなかったんだけどもいつしかシュールだのベタだの考えていたことも忘れて仕事を始めてたんだけども最近になってこの当時のことをバツンと思い出しました。でも当時読んでた解説書みたいなのの名前とか一切覚えてないんで唯一手元にございます巖谷國士さんの『シュルレアリスムとは何か』を参考文献に挙げときます。これ超読みやすくて分かりやすいんで、引きこもってお暇な方はぜひどーぞ。

 

 

 

自動記述とリアルタイム

 

20世紀初頭にシュルレアリスム運動の一環つーか基本つーか最初の頃にやってた表現に『自動記述』ってもんがありまして。書く内容をあらかじめ全く用意せずに、いきなりガーッと書いていく実験的なもんです。スピード重視で。

で、当時実験してたオッサンらは、スピードを段階的に上げてってどんなモノが生まれるのか試してみたんです、オッサンら。たぶん当時僕より若いと思いますけど、オッサンら。

 

・まあまあ速い ⇒ 主語は『私』で、動詞は過去形。思い出語り的。

・けっこう速い ⇒ 主語が『だれか』みたいな不特定な感じになって自分がなくなる。動詞が現在形に。

・めっちゃ速い ⇒ 何か単語が『モノ』みたいに並ぶだけ。まさにオブジェの世界。

 

何かこんな感じだったらしいです。

僕らが未来のことを書く場合はあたかも未来に行って見てきた過去のように書くわけだから文章の全ては基本過去のものなんですけども。

できる限り今を。リアルタイムを走りたい。切り取りたい。切り取って切り口が見たい。『今』っていう切り口はどんな色でどんな形をしているのか知りたい。いつのころからか、過去と未来に向けてブヨブヨと太った自分の意識の範囲をどこまで『今』という面積のない一点までシェイプアップできるのかガールズ。ガールズの場所がおかしい!!!!!

いつのころからかそんなことを思ってて最近思いだしました、自動記述の話を。スピードか。何も書くことを用意しないでスピードを速めれば速めるほど僕の文章はリアルタイムに近づいてくのか。そしてリアルタイムの先にあるものが見えるのか。

 

3年半この連載で自由気ままに遊ばせていただいておりまして、かつてはどうやって書いてたか忘れちゃいましたけど、最近の書き方はどんなんかなーというと、書き始めるまでが異常に遅くて、書き始めると1回最後までブワーと何も考えずに書いて、そこで終わりかというと、もう1回頭からヴワーと自分の文章を添削するように直していきます。ここが面白くない、ここがダメ、ここも違う、みたいな。一見スピード重視のように見えてスピード重視じゃないすね。見直しとか添削とかね。

 

反省します。リアルタイム is クリエイティブ。それは間違いない。だったらやってみます。自動記述。

ってことで、ここまでは事前に考えてたことを書きました。こっから先は何も考えてませんぬ。スピード上げていきます。書き直し見直しなしで。

 

 

 

まあまあ速い

 

薔薇の花が咲いていたので棘を引っこ抜こうとしたら茎の中にめり込んでいってイライラしてつまんで引っこ抜こうとしたらやっと指に刺さって痛くてイライラしたのと同時にやっと刺してくれた的な棘よアリガトウ的な気持ちにもなった。茎を途中でちぎって黒い布でクルクル巻いてみてそう言えばバラの棘を取って切り口を舐めて鼻の頭にくっつけて「サイだぞうー」とかサイなのかゾウなのかはっきりしないコールと共に昔はよく遊んでいて好きな女の子がバラの棘の切り口をベロベロ舐めているのを見て何とも言えない気分になってたけどアレは性的に興奮していたんです。きっと。俺はオッパイフェチとか抜かすバカが多くて女の胸は根源的に性をアピールする基本アイテムなのであってそれはフェチでもなんでもなくて誰でも興奮するもんにフェチとか言ってダイジョーブ博士ですかと。違うじゃん違うじゃんもっとさー髪の毛抜いた時に根っこについてくる白い肉みたいな芯みたいなの舐めると興奮するとかさー力士の背中の毛がボーボーな部分と服にこすれて薄まってる部分がまだらになってる感じを見ると濡れて濡れてしょーがないとか、そういうのがフェチなんでしょうが。僕にはフェチがないフェチがないとずーっと考えてて性的にノーマルであることに異常なほどコンプレックスを抱えていた僕だけども最近ベロフェチっつーか舌フェチなんじゃないかと思うのと同時にベロみたいな分かりやすい部位に興奮するのとかはフェチじゃないんじゃないかと悩んでます。何で僕はベロフェチになったんだろう。何でかな、そういうAVでも見たかしら。幼い頃に。何らかの刷り込みがあってのことなんだろうけど、服を着ていて唯一外界にはみ出す内臓っぽい部分ってことで興奮してんのかしら。分かんないけど。薔薇的な。下ネタか薔薇って、何か最初に登場してたけどメタファーかそれはガンズアンドローゼズ。今さらそんなベタな暗喩出されても困るわ。最近薔薇の絵が描いてあるキャップを買いまして何で買ったのっつーか何で薔薇にしたのと聞かれるので下ネタですと答えるようにしていますけど多分ホントに下ネタなんだろうなー。先日仕事の打ち上げの飲み会で明日の朝までにやんないとぶち殺される仕事があったんでレッドアイ的なぬるい酒でお茶を濁しておったところADが、これあちらの方からですとか言って薔薇を一輪持ってきましてあちらの方を見るとニコニコしながらこっちに手を振ってる最近太ってきた男なわけでダーツのように一直線に投げ返してやろうと思ったら一輪ざしみたいな感じの薔薇のくせに思いっきり棘残ってやがって指に刺さって棘とかもはや刺さらない毎日じゃないですか。大学の大講堂みたいな教室の小汚い机の端っこのささくれだった部分とかが刺さって以来ですよとか書きながら自分の記憶をまさぐってみたら全然そんな記憶なかったっていうかウソだったな。とりあえず言うだけ言ってみてつじつま合わせていこうと思ったのにウソでしたわ。最後に棘が刺さったのいつだろう。人間、そうそう棘は刺さらないってことでいいですかまとめ的には。毎日毎日棘が体のどっかに刺さってたら発狂しますよ多分。それか今頃イエティみたいな風貌ですよ。すべての棘を体毛に。毛むくじゃらのタコが深海にはいるって知ってましたか?知ってましたか?とか言って僕も完全なうろ覚えテレビ知識なんで本当は僕も知っていないかも知れませんが確かいたはず深海に。毛むくじゃらのタコ。成海璃子ちゃんはキモイ深海魚を図鑑とかテレビとかでキャッキャ言いながら見るのが大好きらしいですんでちょっとイッチャってますね。16歳にして長渕剛とか聴いてるらしいんで。俺の16歳とか熱湯でカバンペッタンコにすることしかできないささやかな社会への抵抗BOYでしかなかったのになー。深海魚か。

 

 

15分。あれ、1回も止まんないで書いたつもりでしたのに15分もかかってしまいました。訓練できてない証拠ですね。タイプミス直したりしてたし。過去っつーか何つーか、思いついたことを書いてるだけって感じで別に面白くもないけど、良く読んだらあんましいつもと変わんなかったです。次はヒトケタ台を目指してスピードアップします。

 

 

 

けっこう速い

 

白いきりが何となくドクロの形に見えるようで見えないようで結局は思い込みにしか過ぎないのかもしれないけど、ドクロっぽいってことにしてじっと見る

見ても見ても思いこみが像を結ぶことはなくて、鳥ガラスープを失敗して捨てるラーメン屋の主人が捨てすぎてエコの人に怒られて捨てないようになったら、今度は客にスープの味にブレがあると怒られてストレスでハゲた。

ネズミはネズミのように穴から穴へと飛び込んでいくが、たまには毛っぽくないネズミとネズミに似た人は仲良くすればいいと思うのにやっぱり人間とネズミはMAXこえては仲良くなれなくてネコとネズミは仲良くなれたりするのに。

つまんで捨てるのはどっちの分別ゴミか

もえるほうともえないほう、あえてエラブならどっちか、どっちと付き合うか

燃えない方はしばらく放置しても待ってくれそうなきがするから放置してみようかと思ったらちょっと視界に入るところでクサクなってきてるので目は無視しても鼻が無視できない

花から花へと飛びまわるミツバチのしましまがほどけてぼくをグルグルに巻いていくけどそんなにもキツくはしないのでぼくと仲良くしたいのかしたくないのかどっちなのか迷うので結果としてムンつってちぎっていいのかあえてぐるるぐるのほうがいいのか通って

白い庭の柵の向こうでは金髪の女がバラに水をやっていて水がこっちに向かってものすごい勢いで走ってきたのでかわして見切ってみようと見切りを発動したら動体視力が落ちててよこっつらに(判読不能)ジャーかかって金ぱつ女に笑われたがペットは泣いていた。

小指が右と左を小バカにしながら移動するのでどっちかにせいとツッコんだらちょっと左に傾いて止まってイライラしたのでヒザとヒザの間にはさんでまっすぐに直そうとしたら重心がむずかしいので獣神サンダーライガーを呼んだら死んでた。

セイ!セイ!コマンドー!明日の敵は今日も敵―

やってやろうか大破壊―!

セイ!セイ!コマンドー!娘が色気づいてきたさー

どうするどうするコマンドー!1人むなしく酒こぼしー

やってやろうか大破壊―!

 

※やりました9分です!10分切りました!さっきのはPCに向かってたのもあってスピード出なかったんで、今回はメモ用紙に手書きしたのを忠実に打ちなおしております。こういう実験って、あんまし終わりを見据えてやると面白くなくなるんだろうとは思うんですけど、何かそろそろシメなのかなーとか頭のどっかで思っちゃったらしくて、カッコイイエンディングテーマに勝手に移行してしまいました。良くない傾向ですね。主観が出てる。リアルタイムに近づいてるのかどうかは分かんないけど、前の文章の文字から連想を続けてるみたいな感じですね。単発では浮かんでない。まだまだですね。次は5分以内を目指して。

 

 

 

めっちゃ速い

 

うさぎ殺人目ビームを出してお互い殺し合う群れは最後は2頭でやっぱりビーム

殺人ビーム

雪からなだれ 犬のほう

黒い炎のメラ大王

足腰弱くて三つ子であるというウワサ

かくして走れ 裏に入ってほじられていけばいくほど ぼたんは大きくなって

どこへいくのか 翼もなしに

口ばしはあずかって くもりの演説に殺到タイム

2つ(判読不能)の 網の目にくぐる魚が

エラひっかかる 瞳に映るスワロー

フルーツが落ち 散ってまた大声を上げ

混乱するのは三男坊

ボタンという名の冠は タイムカードも必要なし

海に引かれた縦線が

今日の世界と兄貴をなぐさめつつ

分断する

目を盗む 上へ上へ上へ上へ

引きずられても大人しく

紳士のたたずまいで地獄へ

出てる釜ひっこぬかれ

散った熱の溶岩はまっ黄色の花

右と左と右でけっきょく右へいくのは

分かってたよ

丸の中に一線

飛びこむ一千が皮膜を壊す

土木  朝の茶 昼の茶 夜の茶

例えば10時の休憩

丸に棒をさしてふりまわしているのに

丸は丸のまま女神が棒をふった先へ

落ちていく

コネとコネンザイム

脂が中学生クラス

今夜メシでも炊きませんか

たきかたには田舎なりのやり方があって

それは田舎のやつ以外には

教えられない。米だけ持って帰れ

てんどる てんどる てんどる

陽気に笑って側転して舌かまないようにと

マニュアルの最初に書いてあったはずや

どこ見てたんや

夏前の青から発した虫の形の赤いにぶい光が

完全なる真正面から近づいてきて

横によけられず受け入れる

けんかの音が屋上からひびきわたって

下を歩いている人はさよならをつりばりで

上に落とすよ

 

 

※はいコレ5分!字が汚すぎて何書いてるのか読むのが大変でした。スピードに揺れがあるなー。何か、目の前でも脳内でもないところをジーッとみながらズーッとペンを動かして見えたものとか見えた文章とかを手で書きながら次のヤツをまた見てる感じ。やっぱまだ主観が入ってるなーと思うのは、疲れると日本古来の七五調みたいなのが発動して、即興詩みたいなのになっててつまんない。それ自動記述じゃないじゃん。そういう意味で、気に入ってるのは「土木」の辺りです。でも、自動記述ってスピード上げて毎日やり過ぎてみんな発狂しかけたって書いてたんで、ホンイキのマネはしない方がいいです。

 

 

 

リアルタイムの先へ

 

なんやねんこいつ誌面ムダにしてワケわからんこと書いてるだけやんけとご不興のかたは申し訳ございません。

でも、個人的に普段から思ってることの1つとして、シュールっていうのは、部屋で腕組みしてウンウン言いながら考えた不条理ギャグではないってことで究極の瞬発力。何も準備出来ない瞬間に0コンマ何秒で無意識に口や体からこぼれ出した言葉や動きそのものが、シュールってことです。シュールっつーかシュルレアリスム。そういう、学者臭いウンチクを1回垂れておきたかったのと、リアルタイムの先へ行くためには1回書いときたかったのと。両方です。

 

誰かが「僕らが目にしているものは、目に届いた時点で、すべてほんの少しだけ過去の残像なんだよね」とか、ライブのMCみたいなことを言ってたか言ってないかは忘れたけど「だから俺たちは今を目にすることはできない。だけど音楽があれば…何とかかんとか」みたいな。目に見えるものも耳に聞こえるものも全部過去の残像で体に触れられたって信号が脳に到達するには時間がかかる。あの人に触れられてる、と思った瞬間には、もう触れられていないかもしれない。僕たちは五感も六感も置き去りにして走らなきゃいけない。ライブで女にキャーキャー言われるMCを考える暇があったら走らなきゃいけない。景色が溶けて音も後ろに去って風で触覚が麻痺して足とか腕とか付いてるのか付いてないのか分かんないけどとりあえず走らなきゃいけない。

可能な限り、速く。

走っている場所は過去でも未来でもなく今でしかない。僕たちは過去でも未来でも走れない。体がバラバラになるまで走り続けることだけがリアルタイムなのであって、リアルタイムの先にはずっと続くリアルタイムがあるだけ。走っている間は。

輝く向こうの先なんて目指す必要はない。羽ばたいている間は消えない。