山本山本佳宏 yanmo.jp

風とロック コラムアーカイブ

『シェイク is クリエイティブ』 (2007年9月号掲載)

 

No モザイク, No ファンタジー

 

ドリカムはRing! Ring! Ring!をリンリンリンと読ませプリンセスプリンセスはDING DONGをディンドンと読ませ今日から僕はJing-Kengを人権と読ませ!!!

人物像を謎めいたものにすることは一種のファンタジーで僕の担当radio番組の出演者2人は番組開始と同時に顔を公にすることを避け始めたというかそうさせられた。オフィシャルな場所では常にサングラスをかけ放送中に撮られた写真は目にモザイクをかけられてウェブサイトにUPされ顔を守られたというか現在進行形で守られていて「人権がほしい」とボソリと言われたスタート1年半目の春。

顔を隠すのは最悪いいと。番組1周年が過ぎたら顔出ししてもいいという約束を思いっきり無かったことにされたことも最悪良しとすると。リアルを伝えるにはひとつまみのファンタジーが必要なことも理解すると。でも番組企画で4日間連続皇居マラソンやらされたあげく完走のおたけびを爽やかに上げるガッツポーズの顔にも当然モザイクがバッコリかかってどっからどう見ても仮出所中にまたやっちゃったなオレ誰にも止めらんないー!!!な放火魔で「人権がほしい」とボソリと言われた。

顔にモザイクをかけられるのはイヤか。そうか。じゃあどうしたいかアンタたちで考えなさいよ。腕組みをして女のクラス委員のごとく目の前に仁王立ちすると2人はしばらく下を向いて考えた後いきなりブルブルブルブル顔を左右にブルブルブルブル激しくブルブッルブルブル「はい今撮ってください!!」ブルブルブルルブルブルブルブブルブ!!!!!!!This is Jing-KengShake!!!!!!!!!!デジカメの小さなモニターには素晴らしくシェイクされてモザイクの必要ないそれはそれは見事なブレ顔が表示されていて僕はコレならよしと言いながらゲロ吐きそうな顔して突っ伏してる2人を置いてスタジオを後にした。

 


『いつも似たような服 is クリエイティブ』 (2007年8月号掲載)

 

女子大生と女子大生

 

「あいつ」

「まただよ」

「あのチョッキ」

「また着てるよ」

「洗ってんの?」

「それにしても着すぎじゃない?」

「同じの持ってんのか」

「どんだけチョッキ好きなんだよ」

「あいつ、今日のコンパ来るらしいよ」

「何でチョッキ呼んだの」

「話聞かれちゃったから流れで」

「あ、首のトコすっごい掻いてるよ」

「毛が当たってカユイとか見てるだけでむかつく」

「あのチョッキ顔がむかつく」

「あ、ちょっと。チョッキ脱いだよ」

「なーんだ、中にもう1枚チョッキ着てんじゃん」

「ちょっとあんた何でホッとしてんのよ」

「してないわよ」

「したでしょ今」

「してないよ、ただ…チョッキって…ヒジ冷えるなと思って…」

「ねえあんた…まさか、あいつのこと」

「え…」

「チョッキのことを…」

 


『渦巻き is クリエイティブ』 (2007年6月号掲載)

 

巻き

 

もう時効かなーとも思いますんで一番邪魔な時効警察の霧山を殺害した上で時効を待って告白しますと、しょこたんブログに載って僕はコスプレをしてたよ。ハガレンの。羽賀レンタカーじゃなくて鋼の錬金術師の。しょこたんが番組にゲストに来て生放送中に着替えまくって自分のブログにUPしまくるという企画でスタッフも全員コスプレにお出迎えることになって僕もイヤイヤながら当日渡されたロイ=マスタングとやらのコスチュームを着て本来ブーツ的なものを履くべきコスチュームで僕はアホみたいなグリーンと黄色のスニーカーしか持ってなくて結果として下半身は真っ青なスラックスを履いた体育教師みたいになってテンションが四つんばいとなって地べたを這いずったんだけどもしょこたんブログに載ったよ。コスプレに何の興味もなかったけど、やるなら完璧を目指したいと思ったよ。

 

番組終わって残された僕らはアホみたいなコスチュームの上だけ脱いで疲れたホテルマンみたいに片膝立てて座り込んでみたりしたけども、話すこともなくて何となくフェチの話になった。フェチってどこまで行くのかねと。

お前『俺○○フェチ』って言いたいだけちゃうんかと言いたくなるくだらないヤツもいるし、一方では目が今日も明日も見れなくて明後日ばっかり見ている冗談抜きのド変態も確実にいる。上品な雑誌なので書きませんけどヒントは生肉とかです。

フェチってどこまで行くのかな。

そんなことをアホみたいなコスプレしてるアホみたいな分際で考えていたら、知人から袖の下に情報が入った。

 

渦巻きフェチが、いるよ。

 

あぶな――――――――いキキ―――――――ゴゴゴゴ――――――――――記号!!!!!

記号じゃねーか!!!最近は記号にまでフェチの波!!!!!本当か!!!

 

確かに、誰だって渦巻きに目を奪われる人生のある瞬間を過ごしたことがあるだろ。なあ。あるだろ。

栓を抜いて流れていく風呂の湯。ひり出されるソフトクリーム。洗濯機の水が回るのを見つめるのが好きだったヤツもいたな。確かにあったよそんなJEDI。回る回るよJEDIは回るのフレーズが脳内を渦巻いて僕もずいぶんダジャレが達者になってきてオッサン化してきた感があるんだけどフェチとなったら話は別だ。何だ渦巻きフェチって。半永久的に性的に好きなのか。渦巻きが。

10年前に付き合っていた女の名前をついつい検索バーに打ち込んでグゲってみて気持ち悪いコスプレ画像とかがヒットしてガッカリしつつもひょっとしたら本人の成れの果てなのかもしれないと疑う心もあったりしてでもやっぱり違ってちょっと安心して検索を続けるレベルで気になって仕方ないので検索バーに『渦巻き』とぶち込んでグゲってみた。みんなもアグレッシブに使っていきなさいよ『グゲる』。

 

“渦巻きは神であった”(著者:大谷幸市)

 

いいんですかいんですかあっちサイドにいざなわれてもいいんですかー。いざない過ぎだろ。フェチを越えて神のエリアにまで飛んでいってしまいました渦巻き。

 

さらにグゲる。うさんくさいペンダントの通販サイトを発見。こんな歯の治療中のとりあえずの詰め物みたいな素材で38000円。ブラックジャックの歯科医院か。…歯科医院…なんか叫びやすそうな響きだな…すいませんちょっと話を中断して叫んでもいいですか?歯科医―--------------------院グッッッ!!!!!!!

サイトの深い階層まで掘り進んでいくと商品ラインナップの中に渦巻き型のペンダントを発見。商品説明。

 

“こちらのデザインは渦巻きです。”

 

見りゃ分かるな。で?

 

“渦巻きは新しい始まりを意味します。”

 

話飛んだ―――――!!!!鳥人間コンテスト――――――――!!!!!!びわ湖の上を渦巻き鳥がクロニクル―――――――――――――!!!!!

 

雷様。あ、こいつじゃなかった。神様。渦巻きにそんな意味あるんでしたか。僕の知らないどこかの裏側で、渦巻きはそんな地位にまで到達していましたか。何なんでしょう渦巻き。何で僕はこんなに渦巻きに執着しているんでしょうか。自己洗脳?私は彼が好き私は彼が好き私は彼が好き。そう、私は、彼が好き。(←客席を向いて全員で)

 

コツ、コツ、コツ、コツ…(ロビーをゆっくりと歩く音)

いいですかみなさん。僕がこれまでの人生において渦巻きに執着したと断言できるのは、おそらくたったの1回。奥さんそれはいつですか?「え…私に聞かれても…」そう!忘れもしない、3歳か4歳か5歳くらいの頃!真っ白な煙と真っ黒な煙を交互に吐く製紙工場に囲まれたどうしようもない家から初めての引越しを経験した僕は、その新天地でどうしようもなく僕は…奥さん何を目撃したと思いますか?「え…私に聞かれても…」そう!美容院!僕はその時、美容院というものを初めて見た!店の軒先から突き出したあの正方形の看板の中でワケの分からない色の…色の…渦巻きがウノンウノンウノンウノンと渦巻いているのを!!!!!BGM(聖母たちのララバイ) CI≫僕は目を奪われた…目を離せなかった…奥さん、あなたにこの気持ちが分かりますか?「…いえ…全く分かりません…」絵の具全色を混ぜ合わせるとウンコ色になるという伝説を再現するかのように半永久的にうねるウンコ色の渦巻きは一体美容院の何を表現しようとしているのか。理髪店はトリコロールの爽やかポールでスッキリ爽やかなのにも関わらずかつての美容院には必ずあったあのウンコ色渦巻きは一体何を表現しようとしていたのか。幼い僕には理解できなかったし今でも理解できないしむしろ忘れてた。あれは僕にとっての渦巻き原体験か。美容院の看板にエクトプラズムを吸い込まれそうになった僕なりの渦巻きへの復讐なのか。分からない!!あの渦巻きで美容院は何を表現しようとしていたのか!!分からない!!銀河系も渦巻いている!!DNAだって二重螺旋に渦巻いている!!でっかいとこからちっさいとこまで渦巻きってなんですか。なぜ僕はこんなに渦巻きに執着し始めたんでしょうか!!!「え…私に聞かれても…」

 

 


『落書き is クリエイティブ』 (2007年4月号掲載)

 

ラクガッキー

 

絵心がない、という自覚の、なんとほんのりした恥ずかしさであろうか。

 

上半身も下半身も幼きころ、近所の商店街で、お絵かきコンクールが開催されていた。父の日と母の日とヒヒの血とヒヒの歯に(©吉田戦車)。父の絵と母の絵とエエの血とエエの歯を。

On母の日。僕は母の顔を描いた。A賞に入ると商店街で使える500円分のクーポンがもらえたからで当時の僕には500円は大金だった。

モノを描くとき、輪郭を黒でグリグリ描くとダサイ。保育所でのクレヨンお絵かきで唯一得た絵に関する知識をフルパワーで発揮して、色鉛筆の肌色をファーファーシャシャーと走らせ、半透明のオカンを完成させた。別に巧いとは思わん。しかし見よ商店街のオッサンども。このメレンゲのごとく淡いタッチを。良いだろうが。A賞あげたくなるだろうが。

 

B賞でしたB賞とは参加賞のことです。

 

ビビビB、ビビビビBビビなぜだ――――――――――商店街のオッサンども――――――――――――!!!!!あのウスバカゲロウのごとく儚いタッチがなぜ分からんか――――――――――――――!!!!!

 

負けない。商店街のオッサンには負けない。僕は貼り出されたA賞の絵たちを三白眼で眺めた。

A賞の特徴。全体的に荒削りで、なんだったら油性マジックでゴリゴリ濃い目に塗ってあってワイルドスタイル。ゴーギャン的な色味。ゴーギャンって誰だっけ。まあいいや。そうか個人事業主ども。色鉛筆が気に食わんか。見てろ父の日を。

1ヵ月後、僕は父の絵を描き始めた。極太油性マジックを持ち出し黄色がかった肌色であるところの父親の顔色を脳内から廃棄し茶色一色でゴンゴンに塗りたくったそれはそれはハミ出すほどに。そこにはニコリともしないタヒチの松崎しげるがいた。いける。A賞いける。このワイルドチャイルドならぬワイルド茶色。

 

B賞でしたB賞でしたB賞とは参加賞のことなぜだ――――――――――――――商店街のオッサンども――――――――――――!!!!!お前らこういう感じが好きなんじゃねーのか――――――――――――――!!!!!

 

踊らされちまった...商店街に...心を引き裂かれちまった...商店街に...心をなじられちまった...A賞には、淡い淡い色鉛筆タッチのオトンが並んでるじゃないか...なぜなんだよピーピーピー。

B賞の賞品である飴2個を手に膝をついた僕はそのとき気づいた。人の顔色伺って何か創ったってしょうがないということと、僕には絵心がまったくないということを。

 

絵心がない、という自覚は、僕を臆病な漫画の模写に走らせた。

薄いトレースペーパーみたいなのを買ってきてキン肉マンのコミックの上に乗せ、上からラーメンマンやモンゴルマンをそっくりそのままNAZOLだけの毎日。漫画とそっくりに描けたニヤリ。人には見せない。教科書に書き込む落書きにさえ自分の下手を感じ人には見せない。

 

落書きは自分でやりたいときにコソコソっと1人でやってればよくて人に絵を見せるのは絵心ある人だけでよくて。そう思ってた。そして時とともに忘れてた。

 

あれから僕も数々の闘いを経て皇帝にのしあがったり革命にあって首を落とされたりしながら昨年。10代のモデルであり女優であるAちゃんと仕事をすることになって彼女がやってきて最初の打ち合わせをした。仕事内容の打ち合わせなんてたいてい10分以上やる意味がなくて残りの50分くらいはひたすら雑談してたんだけど、プロフィール見たら趣味特技の欄に『イラストを描くこと』と書いてあった。カワイイ新入女性社員を目の前にした時のお局OLのごとき羨望と嫉妬のまなざしを送りつつ、30代が10代に言ってみた。

「イラスト好きなんだー何か描いてみてよ」

「えー何描こうかなー...あ、最近開発したニューキャラ描く」

ピンポーン。寺井さーん。お届けものでーす。ピンポーン。ピンポピーンポーン。寺井さーん。お留守ですかー。寺井留守...と。公衆の面前でイラストを描くことに何のてらいも無く彼女はかわいらしい生物を沙羅沙羅と描き始めた。ええのー絵が上手いって。僕の目が蛇女のようになりまぶたが横から激しく開閉するのを確認したのかしないのか、彼女は少し照れくさそうに続けた。

「イラストって言っても落書きですけどね。好きな落書きを最近お仕事で描かせてもらえることが多くてうれしい」

細胞膜に包まってー3分間で40!!!!!!!!!!!!!!!

MY HISTORY OF ド下手落書きが完全フラッシュバック!!!!!!!イラストならまだしも落書きと認識していながら朗らかに描き人に見せる彼女の微笑みのなんと穢れなき琴代ちゃん!!!彼女の名前は琴代ではありません!!!

 


『谷 is クリエイティブ』 (2007年3月号掲載)

 

谷人生

 

(゚谷゚;){こんにちは。

名は体を現してみましたが僕の名前は谷じゃありませんでした。

(゚山本゚;){こんにちは。

もう元々何をしたかったのか全く思い出せなくなってしまいましたこんにちは。

人生には角度はともかく傾斜がついていて高尾山の頂上でビールを飲んだりする程度のどーでもいいピークがあるかと思えばアスリートが最近着ている気持ち悪いツルテカ肌着のごとくつかみどころのない斜面もあって山と谷は同じ意味だったりして。

要は谷を山と思えるかどうかであり山があったってことは谷があったってことで。

 

谷谷谷谷言ってますが産気づいたんです間違えました気づいたんです。

20057月号で僕は『シンメトリーisクリエイティブ』的なモノを書いたんだけどもそれは左右対称な名前の人は昔から縁起のいい名前であると同時にクリエイティブだという内容。しかも裏表のないある種真っ直ぐなクリエイティビティを持っているんだという内容。内容に深みがねーなーと。裏表がないとか。裏がないやつは表もねーんだよto昔俺(カブリオレの発音で)!!!!!

そんなことを考え始めると夜も眠れなくなって羊を数えようとしたら僕の脳内の羊の形はアルパカみたいに気持ち悪く首が長くて柵を越えずに静かに群れ成してこちらへと向かってきたので1頭ずつ横っ面を張っていたらいつの間にか朝で寝れなかったのかと思ったら全部夢だったので結局寝ていたんですけども。

左右対称文字の中で、1つどうにも気になっている文字があってそれはtany!!!!!!!

田だと? 間抜けに区切りやがって!! 本だ?! 不安定なんだよ立ち姿が!!

これからの時代は谷!!谷という人生を知り尽くしたような文字が左右対称界を仕切っていくのは谷!!文章崩壊すらいとわず谷だ!!!!

谷という文字が名前にあれば、そいつはもう無条件でクリエイティブ!!表裏がないだけでなく味わい深さまで兼ね備えたクリエイター!!字を良く見てると何か困ったような寂しいような顔してるしほっとけないし!!

 


『ダジャレ is クリエイティブ』 (2007年2月号掲載)

 

ダジャレは踊る

 

手のひらから余裕でハミ出すほどデカくて植物を食って食って食いまくって増えて増えて増えまくる。そんな巨大カタツムリがアメリカで再び発見されたというニュースを見たのは少し前だったが、今はどうなっているんだろうか。その巨大カタツムリの名前は、アフリカマイマイ。気になるアフリカマイマイ。何の話だっけ。

そうでした。

アフリカマイマイと韻を踏んで、ダジャレだけは言うマイ。

...そう心に決めたのはいつだっけ。仕事を始めるずいぶん前のような気もしますよ。

とにかく幼い頃からダジャレが嫌いだった。なぜだろう。吉田戦車や山海塾。あるいはダウンタウン、そして山海塾。不条理な笑い、あるいは発想のジャンプ力で遊ぶ笑いの全盛時代を過ごした少年時代だったからか。山海塾は笑いじゃないよ。とにかくダジャレが嫌いだった。誰が何と言おうと、ダジャレなんか言いたくない。ダジャレに使う脳みそがあったらカライ大根とそうでない大根を見分ける方法をずっと考えていたい。そんなふうに思っていた時期が僕にもありました。

なのに世の中ダジャレダジャレダジャレ。ダジャレ追加公演決定。もうはびこってはびこってしょうがない。『社会はダジャレで回ってる』とか『ダジャレは社会の潤滑油』とか聞くとそんな社会なら俺はもう社会人失格の烙印を自分で自分のケツに押し付けてこのリングから去りたくもあったけど、もうここまでダジャレJAPANだと、本当は何かあるんじゃないのかと最近は疑い始めている。

 

2コ上のディレクターがいて2コ上ということは34なわけだけどもここ数年の間に急激にダジャレを頻発するようになった。それはもう爆発的な増え方。イギリスを愛しラバーソウルを履きハットを被り英単語を操り紳士的な仕草をふりまき続けるこの男もダジャレマイマイの渦の中。なぜだ。いい機会だ5W1Hを問いただしてやる。

 

Q1.なんすか。

A1.なにが?

Q2.なんでそんなダジャレばっかり言うんですか?

A2.しょうがねーよ止まんねーんだもん。

Q3.止まんないんすか?

A3.止まんない。思いついた瞬間、クチから出てる。

Q4.かかったらすぐ死ぬ疫病みたいですね。

A4.ん――――...酒飲むと特になー。

Q5.シラフでもずっと言ってるじゃないすか。

A5.もう今から飲み行かない?

Q6.ダメですよ、まだ仕事残ってるもん。

A6.久々にYOUも飲もうよ。浴びるように飲もうよ。あびるあびる、あびるYOU

 

もう自分の文章の中にこの記念すべきダジャレがインサートされていることが屈辱的でDreくらい屈辱的かというと思いを寄せていた女子が僕の大嫌いな同じクラスのヤンキーと付き合い始めて付き合った理由がサックスを買ったからという右心室をワシづかみにされるようなウワサを聞いた時くらい屈辱的。サックスって。

しかしこのたびのインタビューでハッとしたこともいくつかあった。

某ハモリ5人組と仕事をしている知人が、その某ハモリ5人組の右から数えて何人目かの人に聞いたところによると、30代というのは、新しく覚えた言葉と、元々脳内に持っている言葉を関連付けるスピードが最も速い年代らしい。一体何なんでしょうかこの信憑性のない雑談は。でももしそうだとしたら、前述のディレクターのダジャレ頻度の増大もうなずける。

『聴いた言葉と知っている言葉を関連付ける』。それはすなわち、『ダジャレ』ではないか。その関連付けのスピードの速さゆえ、意思に反して口からこぼれだす。これがダジャレを言い始めるオッサンの初期症状なのではないだろうか。

オヤジギャグは30代から。愛してるって最近言わなくなった人をこんなに頼りにしていいかしら。


『予言 is クリエイティブ』 (2007年1月号掲載)

 

地獄に落ちるわよ!!

 

キリストが生まれて2007年目。経すぎ。どんだけ年数経とんねんと。駅前の自転車置き場で因縁をつけられながらも2007年がやってきた。

今年も色々ありましたがとか言われると色々ありましたの主語は何だと言い返したくなるものですが、まあどうやら色々あったみたいですね。

昨日や明日じゃなくて今を歌ったフリーペーパーではあるけども、たまには床暖房の上でスジコのようにグダっと寝転がりながら過去を振り返るのもいいかもな。人肌のぬくもりを持つスジコとして。スジコとしてなんだよ。何様だ。全体的にくっつきやがって。なによいいじゃない。ジワジワ近づいてくる2007年から激しくステップバックして現実逃避する日があったっていいじゃない。

 

2007年を迎え胸を撫で下ろしている僕と、胸を撫で上げた君。動きが不自然!!

なぜ撫で下ろしたか。その理由は2005年の年末にまでさかのぼる。

神奈川のどこか海のそばに住むという占い師というか霊能者というかそういう女性と何の因果か会うことになった。

僕は本来占いとかされるのが大嫌いで、仕事で占い師の人に来てもらってスタッフの皆さんも見てあげますよと言われても、いいですいいですいいです無理ですいいです無理ですと強硬にツッパネーションだったわけだけどもそれは恐怖。うっかり信じやすいという名の恐怖。はいどーもー!!シンジでーす!ヤスシでーす!シンジヤスイでーす!! ヤスシの名前がコンビ名に反映されてない!!!!!!!!怒れヤスシ!!!!!!

今回のこのお方は滅多に占ったりしてくれない著名なお方らしくてどうしても断れず目の前に座らされ占われ。当時31歳にしてドキドキサーティーワン。だってさー女のADとか鼻水垂らしながらうなずいたり大声出したり膝でシャレコウベ割りそうな勢いでお辞儀してたり山本さんすっごい当たりますよすっごい当たりますよみたいな事言ったりして怖いわそんなもん。当たってなくてもイヤなこと言われてテンション下がったりすんのイヤなんだけど占いとかで。いいですいいですぼく無理ですいいです。

さて。スッゲーニコニコしてやがって怖い。さらに怖い。金貸すときのヤクザみたいでスッゲー怖い。

顔は笑顔固定のまま僕をみつめて著名な霊能者はこうおっしゃった。

「疲れてますね」

「はあ」

「あなたは来年............」

「はい...」

「...首の凝りすぎで倒れます」

イヤや―――――――――ん!!!!!!!それ占いか-――――――――??????????健康診断受けに来たんじゃねーんだよ!!!

 

良かった。首の凝りすぎで倒れなくて、本当に良かった2006

世間には数多くの『すぎ』がありますけど首の凝りすぎって。聞いたことねーよそんな占い結果。

本当に良かった。胸を撫で下ろし首を舐め上げながらつぶやいた2007年。今さらながら、『首の凝りすぎ』という占いというか予知というか予言というか。これが面白くなってきた。未来のこと色々イマジンするのって楽しいけどそれを人に向けて断言して外れてもほったらかしみたいな。こんなんでも食っていけるなんて世界は本当に成熟していますよね(棒読み)。どーせバコバコに外すんなら、もっとクリエイティブに、もっと楽しくなれるような外し方があっていいはずというか世の中にはきっとあるはず。クリエイティブな予言がどこかに。


『擬音語 is クリエイティブ』 (2006年11月号掲載)

 

というわけで

 

作家を始めて何年かの間、すごく厳しいというか口うるさいディレクターと仕事をした。

『"さて"を使うな』 『"というわけで"とか書いてんじゃねー』

まあ何かにつけて「というわけでございまして」とか「さて」とか言う人は多いし、実際に編集点として便利な面もある。でも作家が原稿でそれをやっちゃダメなんだと、作家としての脳みそが腐るんだと、むこうの口と僕の耳が同期して酸っぱくなるくらい言われた。

当時は「うっせーなこのオッサン。関係ねーだろーが」としか思ってなかったが、ある程度年齢を重ねた現在、あのときのことをふと思い出す。

今僕は、文の頭に『さて』とか『というわけで』とか書くのが死ぬほど嫌いだ。それはあのディレクターの教育の結果なのか、実は昔からそう考えていたのか、今となっては分からない。しかし、いつの間にかどんどん『というわけで』を意識的に排除していきある日ある事実にあるっと気づいた。

 

「見てるやつがハッとすれば、それでいいんじゃねーのか?」

 

見る側&聞く側の注意を「話変わったよー」「仕切り直しますよー」と喚起する目的さえ果たせば別に何でもいいんじゃないか。

 

テレビではなかなかやりづらいので、まずはラジオでやり始めた。何をだ。

『"というわけで"の代わりに、完全に脈絡のない擬音語で話を仕切りなおすこと』だ。

 

先週の原稿ファイルを開き、『というわけで』と書かれた部分を探し、BackSpaceカチカチカチカチカチカチ。価値が化石化した接続詞などこの世から消えてしまってよい。

『というわけで』の代わりに、『す―――――ん!!』と書いてみた。叫んだのに叫んだ実感がすげーない音って何かなーと思いながら横棒をパチパチ伸ばしただけという以外の意味はない。どうしようもない志の青臭さ。どうしようもない文字ヅラの異物感。そしてタレントが半信半疑FACEで『す―――――ん!!』と叫んだ瞬間の、どうしようもない快感。ほら!成立してる!成立してなくてしてる!異物感があればあるほど話題転換には持ってこいだ!!!よし、今日から変な音インサートしまくってやる!!!!!!

 

正確に言えば、これは擬音語とは言えないかもしれない。

 

ぎおん-ご 【擬音語】

事物の音や人・動物の声などを表す語。「ざわざわ」「がやがや」「わんわん」「しくしく」の類。擬態語。写声語。オノマトペ。

 

野間園子、18歳高3。最後のインターハイ。しかし彼女は、今シーズン一度も自己記録を更新していなかった。そう、ライバルが突如、陸上部から消え去ってしまったあの日から。あいつさえいなくなれば、インターハイの優勝は私のもの。そう思っていたはずだった。なのに、飛べない。昔なら軽やかに越えていたはずのあのバーが、今日も飛べない。そして、THE LAST JUMP。仲間たちが見守る中、野間はいつもと変わらない助走を始めた。徐々にスピードが上がる。不安も徐々に増す。そのとき、観客席からの声が聞こえた。「お野間―!!」 あの声はまさか。「お野間――!!!」間違いない。私がいつも目標としていた、ライバルだと思っていた、あいつの声。あいつが、私のTHE LAST JUMPを見に来ている!!飛べる!飛ばなきゃ!あいつの前で、飛ばなきゃ!!「お野間―――!!お野間飛べ―――!!!!!!!」「誰がオノマトペだ――――!!!!」ピョ―――――――ン!!!(場内から歓声)

 

すいませんオノマトペと聞いて高校時代の熱き思い出が蘇ってしまいました。

擬音語でしたね。

ざわざわがやがやわんわんしくしく。日本語は擬音語が多いね。というか擬音語抜きではほとんどの日常会話が成立しないね。よく頑張ったね。君はそのままで大丈夫だよ。泣いていいよ気持ち悪いわ!!!カウンセラー(東京在住・男)か!!!

擬音語でしたね。

『事物の音を表す』ことが擬音語か。やっぱり何かを表してこその擬音語か。なら、クリエイティブを擬音語で表す事は可能というか表しても良いんじゃないかというか文字ヅラだけでクリエイティブを表現できるなんて素敵というか既存のものをありがたがって使うだけなんてつまんないというか。


『失敗 is クリエイティブ』 (2006年11月号掲載)

 

シパイラル・ハリケーン

 

正義:  ぐうあおおおあおああああっ!!!  (ドサーッ!!!)

 

悪:  ニニニニニニニニニ!!(注:笑い声) シパイラル仮面よ、関東甲信越のヒーローと呼ばれたお前も、所詮はこんなものか!!

 

正義:  ゥグッ...!!! このまま...シパイラルはこのまま終わるわけにはいかん!!

 

悪:  ほう...まだそんなナマイキな口を利く元気があったようだな!!

 

正義:  アタイにはコレがあるのを忘れたか!!

 

悪:  何っ!! まさか...

 

正義:  月よ!星よ!太陽よ! 銀河系が渦となり! 嗚呼、渦となり!!!!

 

悪:  その技は!今まで数々の強敵を倒し...

 

正義:  グルグルグルーン!!! (ガツッ) ぐあっ!!!

 

悪:  あ、腰骨をテーブルで強打。

 

正義:  いたたたたたたたたたたた!!!!

 

悪:  これが、今まで数々の強敵を倒そうとしたものの毎回失敗しているという、『シパイラル・ハリケーン』...

 

正義:  失敗した―――――!!!すごい痛いー!!!

 

悪:  ものすごく大技だというウワサだけは聞いたことがあるが...

 

正義:  しびれてる!右半身がしびれてる!(ゴロゴロゴロゴロ)

 

悪:  あまりの失敗の多さに、パンチなのかチョップなのかただのジャンプなのか、誰も知らない『シパイラル・ハリケーン』...

 

正義:  (ゴロゴロゴロゴロゴロ)

 

 

 

失敗しない○○

 

本屋を歩いてると、気づくんだ。『失敗しないリフォーム』『失敗しない医者選び』『失敗しない田舎暮らし』『失敗しないプログラム発注』『失敗しないケーキ作り』『失敗しない接着芯の選び方』『失敗パイポパイポパイポ!! 失敗パイポパイポパイポ!! 失敗パイポパイポパイポ!! 失敗パイポパイポパイポン!NO 成功,NO LIFE!!!どこを見たって失敗したくないやつらの大集合!!そんなに失敗したくないか!!家とか住む土地とかまだいいわ!!発注もまだいいわ!!ケーキ作りとか盆栽作りとか接着芯とか失敗したっていいじゃねーか接着芯?何接着芯って。中国の健康野菜か。別名ペタヘイヤか。全然調べる気が起きん!!接着芯とは、基布の片面又は両面に接着剤がついた芯地のことで基布の種類(織物・編物・不織布など)と接着剤のつき方(完全接着タイプ・仮接着タイプ)の組み合わせで多様な接着芯が創られています」知るか――――!!!誰だ俺の耳元で接着芯のことをささやいた天使は!!!!天使限定かい!!!どれだけささやかれても俺は曲がらない!!俺は折れない!!俺とお前の人生に特に影響がないことだけは語感で分かってるんだぞ失敗しない接着芯!!

ダメですか。探し物は何ですか。そんなに失敗したくないですか。まだまだ転びたくないですか。カバンの中も机の中もすりむく膝がかわいそうですか。失敗なんかすりゃいいじゃん別に。どーせ元々ゼロみたいな人生なんだから俺ら。

別に、『失敗は成功の母』とか偉そうなことを言うつもりもないし、『失敗は成功の母とその愛人』とか不穏な登場人物を付け足すつもりもない。ただ言いたいのは、『失敗は、それ単体でクリエイティブなんじゃないか』ってこと。『面白い』と言い換え可能でもある。ずっこけてるのを見たら笑えるし、女にひっぱたかれてるのを見たら同情しつつもこれまた笑える。俺が転んだらみんな笑うだろうし、ひっぱたかれてたら笑えばいいし、別に気にしない。そう思って生きてきたんですけど、違うんでしょうか。そんなに失敗したくないんでしょうか。失敗できる時に失敗しないで年をとっても失敗しないでその結果人生が全体的に失敗みたいな。失敗しないイコール成功っていう等式は成立するのか。

失敗って、しちゃダメなのか。

 

『ダンス is クリエイティブ』 (2006年10月号掲載)

 

ダンス教室 

 

「あのー...すいません」

 

「いらっしゃいませ」

 

「習いたいんですが」

 

「では右手を上に挙げてみてください」

 

「こうですか」

 

「もっと垂直に。洋梨をつかみとるようなイメージで」

 

「なるほど。こうですか」

 

「そうです。次は左手を直角に曲げて前後に動かしてください」

 

「右手は挙げたままですか」

 

「挙げたままです」

 

「はあ...こういう感じでしょうか」

 

「もっと回転させて。喜びの機関車のようなイメージで」

 

「くっ...こうでしょうか」

 

「なかなかいいですね。見込みがあります」

 

「ありがとうございます」

 

「では、入会希望書に記入お願いします」

 

「はい」

 

「右手を下ろさないで!!

 

「え?」

 

「洋梨をあきらめないで!!

 

「でも私、右利きだからこのままじゃ書けません」

 

「あなたにとって、本当に大切なのは、入会希望書と洋梨、どっちなんですか?」

 

「入会希望書に決まってるじゃないですか」

 

「痛い痛い痛い!左手がわき腹に当たってます」

 

「すいません」

 

(続く)

 

 

 

日常の中のダンス

 

踊れ踊れ!ヒャーハハハハバキュンバキュンバキュン!!!ならず者に酒場で足元を乱射されるさすらいのガンマンをニヤついた目で眺める客ABAのほう。それくらいの重要性で世の中に参加していきたいです。何の決意表明でしょうか。

先日、担当する番組に某企業から依頼が来た。「ウチがテレビCMでやってるダンスを流行らせてほしい」。無理ですだのあーだのこーだのの末、その商品の新しいダンスを作ることになった。作詞した。その場のノリでアホみたいな振り付けに決まった。どうなんでしょうか。この号が出る頃には少しくらい流行ってるんでしょうか。まあその辺はどうでもよくて、そのダンスのムービーを収録しているのを横でボンヤリ見ながら、おおおおむすびを食べつつ、ぼぼ僕は、おお、おおおお思ったわけなんです。だから語尾のルール守れよ。

なんでこいつ(タレントさん)踊ってんのかなーと。なんで商品のためにダンス作んなきゃいけないのかなーと。変なのーと。

元々、ダンス的なものに一切興味がないし今もない。高尚であればあるほど興味がない。はい飛んだ――!!はい回った――!!開脚――そして笑顔--!!!こっち見んな――――!!!!!

アートを解さないと言われても印象派って良いよねの次に来る安藤忠雄って良いよねの次に来るクロムハーツって良いよねの次に来るイームズって良いよねの次に来るラッセンって良いよねくらいのレベルなものでまたラッセンかー...しぼりだした末にラッセンとか言ってんのがダメなんだろうなーというくらいの解さなさだから仕方ないけど、なんか身分が卑しいやつみたいな扱いを受けるのも腹立つので何となくダンスを解したフリをして毎日俺はオフブロードウェイだった。I LOVE N.Y....I LOVE NOBUO YANA.

よく考えたら八名さんはそんなに好きじゃなかった。そろそろ研ぎ澄まされたアートとしての肉体たちに殴り殺されそうなのでこの辺でしなやかな黒豹のようにやめときますけど。

 

非日常的な動きを、非日常として見せられると、ダメなの。自分との間にすごく断絶感があって、体が拒否するの。

DOYO、こんなアーティスティックな動きできるんだぜー」とかやられても、ダメなの。

ダンスは『ハレ』というかなんというか非日常そのものなのか。大体日常で両腕振り回したりするのはセックスした後「お前あんなところに毛が生えてるんだな」とかベッドで彼氏にボソッと言われて顔真っ赤にして胸をポカポカ殴る彼女くらいのもんで、それ以外の人間には全く必要ない。ウェルコメン五十肩。そんな肩もロクに上がらないオッサンが群れている日常にダンスを持ち込んで流行らせたり覚えさせたり面白いじゃんと思ってもらったり自分もやってみようかなと思わせたり。そんな努力のほうが、クリエイティブなんじゃないかと、個人的には思う。




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