シパイラル・ハリケーン

 

正義:  ぐうあおおおあおああああっ!!!  (ドサーッ!!!)

 

悪:  ニニニニニニニニニ!!(注:笑い声) シパイラル仮面よ、関東甲信越のヒーローと呼ばれたお前も、所詮はこんなものか!!

 

正義:  ゥグッ...!!! このまま...シパイラルはこのまま終わるわけにはいかん!!

 

悪:  ほう...まだそんなナマイキな口を利く元気があったようだな!!

 

正義:  アタイにはコレがあるのを忘れたか!!

 

悪:  何っ!! まさか...

 

正義:  月よ!星よ!太陽よ! 銀河系が渦となり! 嗚呼、渦となり!!!!

 

悪:  その技は!今まで数々の強敵を倒し...

 

正義:  グルグルグルーン!!! (ガツッ) ぐあっ!!!

 

悪:  あ、腰骨をテーブルで強打。

 

正義:  いたたたたたたたたたたた!!!!

 

悪:  これが、今まで数々の強敵を倒そうとしたものの毎回失敗しているという、『シパイラル・ハリケーン』...

 

正義:  失敗した―――――!!!すごい痛いー!!!

 

悪:  ものすごく大技だというウワサだけは聞いたことがあるが...

 

正義:  しびれてる!右半身がしびれてる!(ゴロゴロゴロゴロ)

 

悪:  あまりの失敗の多さに、パンチなのかチョップなのかただのジャンプなのか、誰も知らない『シパイラル・ハリケーン』...

 

正義:  (ゴロゴロゴロゴロゴロ)

 

 

 

失敗しない○○

 

本屋を歩いてると、気づくんだ。『失敗しないリフォーム』『失敗しない医者選び』『失敗しない田舎暮らし』『失敗しないプログラム発注』『失敗しないケーキ作り』『失敗しない接着芯の選び方』『失敗パイポパイポパイポ!! 失敗パイポパイポパイポ!! 失敗パイポパイポパイポ!! 失敗パイポパイポパイポン!NO 成功,NO LIFE!!!どこを見たって失敗したくないやつらの大集合!!そんなに失敗したくないか!!家とか住む土地とかまだいいわ!!発注もまだいいわ!!ケーキ作りとか盆栽作りとか接着芯とか失敗したっていいじゃねーか接着芯?何接着芯って。中国の健康野菜か。別名ペタヘイヤか。全然調べる気が起きん!!接着芯とは、基布の片面又は両面に接着剤がついた芯地のことで基布の種類(織物・編物・不織布など)と接着剤のつき方(完全接着タイプ・仮接着タイプ)の組み合わせで多様な接着芯が創られています」知るか――――!!!誰だ俺の耳元で接着芯のことをささやいた天使は!!!!天使限定かい!!!どれだけささやかれても俺は曲がらない!!俺は折れない!!俺とお前の人生に特に影響がないことだけは語感で分かってるんだぞ失敗しない接着芯!!

ダメですか。探し物は何ですか。そんなに失敗したくないですか。まだまだ転びたくないですか。カバンの中も机の中もすりむく膝がかわいそうですか。失敗なんかすりゃいいじゃん別に。どーせ元々ゼロみたいな人生なんだから俺ら。

別に、『失敗は成功の母』とか偉そうなことを言うつもりもないし、『失敗は成功の母とその愛人』とか不穏な登場人物を付け足すつもりもない。ただ言いたいのは、『失敗は、それ単体でクリエイティブなんじゃないか』ってこと。『面白い』と言い換え可能でもある。ずっこけてるのを見たら笑えるし、女にひっぱたかれてるのを見たら同情しつつもこれまた笑える。俺が転んだらみんな笑うだろうし、ひっぱたかれてたら笑えばいいし、別に気にしない。そう思って生きてきたんですけど、違うんでしょうか。そんなに失敗したくないんでしょうか。失敗できる時に失敗しないで年をとっても失敗しないでその結果人生が全体的に失敗みたいな。失敗しないイコール成功っていう等式は成立するのか。

失敗って、しちゃダメなのか。

 



 

失敗年表

 

いつもの通りまずはわが身から。自分の人生を彩る代表的な失敗たちを振り返り、クリエイティブかどうか確認してみた。

 

1 小学校時代:

初恋の女子が転校することになり、気持ちを伝えたいが直接言う勇気もなく青緑な悩みは毬藻状に浮遊した。結局、引越し当日の朝に手紙を直接ポストに投函することにしたんだけどもしょうがないよ。コレはしょうがない。怖いもん返事なんて。で。問題は書く内容。とりあえず『好きでしたサヨナラ』な内容にすることは早々に決定したのだが、具体的にラブレターとは一体何ののかが分からん。どのラインを狙っていけばいいのか分からん。悩みに悩んだ末、文章はできた。4行くらい。超ド迫力余白。不安になると物量で押したくなるのが自分のSA-GAで、その余白にキン肉マンとウォーズマンの絵を左大臣右大臣みたいに描いてみた。投函したあああああああああ記憶を呼び戻すのはやめてくれえええええええええ!!!!!

 

・診断⇒この失敗はクリエイティブです。

自分が1番好きなものを100%表現する。その行為と熱は、必ず相手に伝わります。相手の顔色を窺わず、キン肉マンが心から好きだ!!というキモチを表現した結果、かつてないラブ&マッスル、恋筋肉なコラボが誕生しました。

 

 

2 高校時代:

電車通学。ほぼ毎朝同じ電車に乗って学校に向かう。あるとき、ふと気づいた。他校の女子。友達と会話している。聞いたこともないような外人の名前を羅列してクスクス笑ってる。「だからホランソワはあそこでも馬に乗って登場すべきなんだよ」「いやーでもあそこで馬に乗ってるとケミカルとの恋に必然性が生まれないわけで」(名前と会話内容は適当です)

生まれて初めてLIVEで直視する腐女子だった。俺と友達は下世話な根性で毎日その解読ほぼ不能な会話に耳を傾け続け、そして「あいつらがピクっと反応しそうなオタク話って何だろうか」という話し合いの結果、『ドラゴンボールの話を楽しそうにする』ことに落ち着いた。ココが落としどころなのかどうなのかは全く分からないがとりあえず朝の車内。「サイバイマンって意外と強いよね」「ヤムチャの手には負えないよね」(会話内容は適当です)...チラッ...どうでしょうか反応してる―――!!!バリバリ反応してる――――!!!何かキャーキャー言ってる―――!!!!初めて作ったルアーでニジマスゲットしたようなうろたえと喜びの数ヵ月後。電車を降りてホームを歩いていると俺は突然呼び止められ振り向きそこに立っていたのはその腐女子の片割れであった。あのですねえっとですねとか言いながら俺に手紙を差し出すそのコを置いて、俺はダッシュで逃げた。どこまでもどこまでも怖くなって逃げた。失敗だった。わずか1回のドラゴンボールがこんな恐ろしい突発告白へと発展するとは。すごく怖かった。

 

・診断⇒この失敗はクリエイティブです。

自分とは接点のない異ジャンルを切り捨てるのではなく、自ら飛び込んでいったことによって、1つのドラマが生まれました。その女子にとっては苦い思い出となったかもしれませんが、互いに新しい世界へと踏み込んだ勇気はいつか大粒の雨となり、大地に降り注ぐことでしょう。

 

 

3 大学時代:

ことあるごとに集まっては飲み散らかす大学生。その夏の夜も、ことはないのに集まって汚らしく飲んでいた。そんなに強くない俺は2次会でぶっつぶれ、カラオケ店の入口のマットの上で丸まってネコのように寝ていた。ここまではいつものことで特に失敗ではないが、この日は特に酒量が多めで、正直やばかった。何とかスポーツドリンクを飲んで復活しないとやばい気がする。必死でマットから起き上がり、横にあった自販機に手をかけ、一気に喉へと流し込んだらホットミルクティ―――――――!!!!!甘暖かい―――――――!!!!友達の笑いの渦の中、俺の意識は遠のき、気づいたら病院のベッドで寝ており母親が泣いており、俺の腕と性器には管が入っていました。

 

・診断⇒この失敗はクリエイティブです。

死んだって別にいいんだよとかそういったパンキッシュな考えはまったくなく、ただ周りが笑って1ヶ月くらいネタにして面白がってくれたことにすごく幸せを感じた。あのときホットミルクティを買って失敗して本当に良かった。急性アル中で死ななかったことよりも1000倍くらいウレシイ。

 

 

こうやって少し振り返っても、全ての失敗はクリエイティブに輝いている。ひょっとして、現在何の役にも立ってない失敗も多いかもしれないが、失敗は単独首位で輝いている。これは結構、いけるんじゃないだろうか。

 

 


SNH(失敗ニュースヘッドライン)

 

失敗に注目してみると、世の中にはクリエイティビティをツンツン刺激する失敗ニュースが掃いて捨てるほど...掃いて捨てるほどは言いすぎか。寄せて上げるほど...焼いて食べるほど...剃って荒れるほど...もう何でもいいや。切手集めるほど転がっている。

 

・「とことん犯行に失敗した男」 [アメリカ・ユタ州]

ジョー・ルセロ(30)は日曜日の午前545分頃、コンビニの駐車場で二人の女性にナイフを突きつけて金を奪おうとしたが、逃げられてしまい失敗。その足で今度はアパートに侵入しようとしたが上手く入れず失敗。仕方がないのでアパート前の道路を横切り、今度はジープに乗っていた二人にナイフを突きつけて「車を降りろ!」と脅し車を奪うことに成功した...かに見えたが、あせって急発進したため直後に事故を起こし車は横転。血まみれで這い出したルセロは、ハアハア言いながらまたもや付近にあったアパートに侵入を試みたがやっぱり部屋には侵入に失敗。やけくそになって玄関のドアを蹴破ってある部屋へ押し入ったが金ではなく子供を出せとワケのわからない要求をした上、駆けつけた警察からの逃亡に失敗して逮捕された。

 

⇒みんな――!!見つけたよ―――!!ここに失敗の王様がいるよ―――!!山に山菜採りに出かけて、うっかり『シッパイキノコ』を食ってしまったのかと思うくらいの連続失敗ぶり!!!!対角線上を走る新体操選手を見るかのようだ!!!美しい!!クリエイティブを通り越してアートすら感じる!!!

 

・包茎手術に失敗してブッシュの中でうずくまる少年たち [南アフリカ]

南アでは、男子が大人の男になるための儀式として、毎年6月から7月、11月から12月の2回、包茎手術のシーズンがやってくる。しかし、病院で手術を受けるのには費用がかさむため、中には、自分で手術してしまおうとする男子もいる。

こういった無茶な自己手術に失敗した少年たちは、人目を避けて村の周囲のブッシュの中でうずくまっていることが多い。そこで当局は、包茎手術シーズンになるとメディカル・スタッフ400人、3機のヘリコプター、400台の四輪駆動車を配備して、包茎男子レスキュー体制を強化。周囲のブッシュの上空にヘリを飛ばし、そのような少年がいないか、空から捜索するのである。

 

⇒いたたたたたた!!!!!男子in the ブッシュ!!!! 痛くて踊れない大捜査線!!!!!文化は違っても思春期男子がやらかすことは万国共通!!性の悩みは渦を巻いてあさっての方角へ飛んでいく!!!先に謝っとく!!ゴメンね。でもお前らin the ブッシュ最高!!!バカすぎおもろすぎ!!!

 

・蛇が自分の尻尾を食べて失敗 [台湾]

台湾の台東水族館で飼育されている北アメリカの砂漠産のキングスネイクは、理由は不明だが24時間に渡って何も食べていなかった。これもある種、飼育係の失敗。しかし失敗はこれにとどまらなかった。腹をすかせたキングスネイクは自分の尻尾を見て反射的に噛み付き、飲み込もうとした。それを飼育係が発見して、あわてて応急処置を施したが、あわてたのには理由があった。キングスネイクは、別名"Hoop Snake"と呼ばれ、自分の尻尾を咥えた状態で地面に対して水平に直立し、車輪のように回転しながらものすごいスピードで人間を追いかけてくるという都市伝説に近い目撃情報があるからである。

 

⇒グリングルングルングルン!!!!来ないでー――――!!!!ヘビ来ないで―――――!!!!!回転始める前に止めて―――――!!!!ちょっと飼育係のお前!!イリオモテヤマネコもヤンバルクイナもどうでもいい!!キングスネイクにだけはエサをやれ!!大失敗じゃねーか!!...いや、飼育係はこの都市伝説を知っていたのでは?知っててあえてエサをやらなかったのでは?檻の中でグルングルン回転するヘビをお客様に見て頂きたかったのでは?あえて?ねえあえて?壮大な失敗クリエイティブを止められた?惜しい!!そう考えると惜しい!!

 

いやー、やっぱり失敗っていいね。何にも学ぶ事が一切ないけどいいね。




失敗知識データベース

 

ひと口に天狗と申しましても色々ございましてですね。天狗にも大天狗・小天狗といった分類も存在します。小天狗の言い伝えとしてではですね、飛騨地方に伝わります話によりますと、木こりが山小屋で入浴中にですね、「気持ちよいか」と側の木から声を掛けてくる者がいたそうなんでございますね。それでもって木こりが罵声をあびせると「覚えていろ」と声がしたもんで、おかしいなあと思いながらも、その木こりが翌朝気づくと大事なまさかりが飴のように曲げられていたということなんですね。この伝承で重要なのは木こりのやつあんまりじゃないかという事ではなくてえ?そういうことじゃない?小天狗の恩を仇で返すようなやつは、まさかりをグニャッと曲げられて当然...え?今から紹介するのは、「怪異・妖怪データベース」ではなくて?「失敗知識データベース」?すいません...私が知ってるデータベースと言えば「怪異・妖怪ベース」くらいのものなんで...あ、そういえばご存知ですか?千葉県の船橋駅前には、放置自転車の列を端っこからチョンと押して自転車を倒す妖怪がいるんです...え?どうでもいい?妖怪研究家に直接聞いた激レア情報なのに?興味がない?...分かりました。

 

科学技術振興機構が一般公開を始めた「失敗知識データベース」。その名の通り、科学技術分野の事故や失敗をデータベース化したものである。

まあ一瞥するだけで、「あっちゃー」とか時間差で恥ずかしくなるような言葉を発してしまうほどリアルな大失敗が並ぶ。ビル崩壊とか飛行機墜落とか。クリエイティブとか言ってられねーなー...と思った矢先!!!炊きたての米のようにキラリと光る失敗を発見した。

 

・火星探査機「マーズ・クライメート・オービター」事故(1999)

この探査機は火星周回軌道に入ろうとして失敗。火星へ衝突しぶっ壊れた。

原因は、プログラム段階でヤードとメートルを間違って計算。発射当初からどんどんズレが大きくなって9ヵ月後に火星にチュドーン。

 

来た―――――!!計算ミスでマイナス10点どころかマイナス22500万ドル!!!!!!!!先生そんなに点数引かないでください!!!!ここまで壮大な計算ミスネタが存在したか!!!!「てへへへ、計算ミスって0点取っちゃった」とか中途半端な頭悪い自慢してるやつ!!!そんなもんネタなんかじゃねー!!やるならこれくらいやって「テヘへ」って笑ってみろ!!!!!飲み会で一生のキラーコンテンツになるぞ!!!

 

 

 

失敗学で生み出すクリエイティブ

 

失敗は学問にさえなってらっしゃる。しかしなんでもかんでもマニュアルにしたがるんだなーという思いもありながら失敗学。東京大学名誉教授の畑村洋太郎という人が提唱し始めたとのこと。確かに『失敗学』にまつわる書籍は数々お書きになっていらっしゃるようだが、結局のところ失敗学って何なのかというと、『起きてしまった失敗を次に生かそうというポジティブな学問』。まあ予想通り。それはいいとして畑村氏の興味深い発言を発見した。

 

『失敗の原因は、「未知」「無知」「不注意」「手順の不遵守」「誤判断」「調査・検討の不足」「制約条件の変化」「企画不良」「価値観の不良」「組織運営の不良」の10種に分類される』

 

めんどくせ――――...もう11個考えんのダルいなー...(←調査・検討の不足)

しかし、この10種類に分類されるとすれば、この10種類を全て踏まえた失敗こそが最高にクリエイティブな失敗に結びつくのではないだろうか。どうせ目指すなら最高を目指す。

 

★『未知』

上京初日。初めての渋谷。

 

★『無知』

友人とハチ公で待ち合わせと言われたが、犬ってどんな生き物か良く知らない。

 

★『不注意』

声をかけてきたホスト風の男が渋谷に詳しそうだったのでハチ公まで案内してもらうことにする。

 

★『手順の不遵守』

ハチ公に向かう途中、ホストが「付き合って」と言ってきたのでOKした。

 

★『誤判断』

「俺と店に行くか、友達を待つか、どっちか選べ」と言ってきたので、モチロン店に向かった。

 

★『調査・検討の不足』

店に入り、とりあえず「ドンペリニヨン・ロゼ」を5本ほど頼んだ。

 

★『制約条件の変化』

彼氏(ホスト)がテーブルに来て、「お前は彼女じゃなくて客だ」と言われた。

 

★『企画不良』

ホストをぶん殴って外に出ると、実は今日、友達の誕生日で、大好きな花を会う前に買ってからいこうと思ってたことも思い出し、花屋に走ったがとっくに閉まっていた。

 

★『価値観の不良』

花屋のシャッターをガンガン叩くと店員が出てきたので100万円払って花を買った。

 

★『組織運営の不良』

ハチ公を自分で探そうとして歩き始めたら、店員が「店長になってくれ」と頼んできたのでOKし、店員を全員クビにした。

店員は泣いた。友達から絶交メールが届いた。自分も泣いた。ホストが走ってきたので逃げた。途中で四つ足の生き物に足を噛まれた。

 

 

んー...なんか良く分からんが美しい!!

 

 

 

失敗すればいいじゃないですか

 

最近、我ながらオッサンだなーと思いつつイライラすることがある。

『失敗しない』ことを目標にして、どこで習ったのか無難な企画ばっかり出してはこっちの顔色を伺ってるハタチそこそこのやつがいて。失敗しても100%許される最後の年頃なのに、そんなに怒られることが怖いのか...と考えてハッとした。この子、自分のこれまでの人生に貯金があると思ってるんだ。失うのが怖いんだ。

人生には貯金も借金もない。毎日残高ゼロ。失敗して元々。成功したって失敗したって、明日目が覚めればまたゼロから。そう思って生きてきた。じゃないと失敗を楽しめないから。失敗しないイコール成功じゃない。失敗を楽しめるイコール成功なんだよきっと。それが分からないまま、その子は俺よりも稼ぐようになるかもしれないけど、そうなっても全然うらやましくないなー。