元々ガッツとか根性とか全くない性質なものですから、体調が悪いとすぐにやる気がなくなってしまいます。寝たくなる。寝るの好きだから。で、布団の中でぬくぬくしながら、昔の結核の作家とか喀血しながら物書きしたという人たちのことを考えて、スゴイですねーとか素直に思ってしまいます。ガッツあるなーと。僕なんか咳が出始めたらすぐに薬飲んで寝てしまいます。体調悪い時に面白いことなんか考えられません。




前にも書いたかもしれませんが、僕はおそらくハタチ以降、朝起きて体調が良いと思った日が一度もありません。体調のことを考えなくて済んでること自体が大して体調悪くない証拠だろ、と言われたら全くその通りなんです。鼻が詰まったりするとーわかーるんだー的な。毎日毎日眠いしダルイし頭痛いし何かムカムカするし食欲がイマイチ湧かない。別に仕事してなくても。ああ、「体調スッキリ!今日も絶好調!」ってどんな気分なのかなっていつも思ってました。いつか、みなさんの言う、『体調万全!』っていう状態で仕事するのは夢というか憧れの一つです。

僕は酔っぱらって、あるいは何らかの薬物を投入して面白いことを考えることもできません。苦手とも言えますけど。酔っぱらって脳みそが浮腫んでいるような感覚の時って、僕本当につまらないんですよ。相対的に。素面の時に比べて。頭が回転してない。だからそういう時には仕事ができない、仕事がその後あるのに飲酒とかできない。人から頼まれた単なる作業ならいいんですけど、本当の意味での仕事はできない。僕はその場にいるだけで価値があるような人間では全くないですし、むしろその正反対です。少しでも面白くないなら即座に叩き出される程度の下賎の民です。可能な限りスッキリした状態で現場に臨まなければなりません。

 

体調の良し悪しを人と比べることに何の意味もないということを知った今ではこういうことも書けますけど、クソガキだったころは、女の子がいちいち体調悪いアピールするのが本当に嫌でした。お腹痛い頭痛い気分悪い足痛い肩凝った熱がある、もう会うたびに言ってるじゃないですか。ふざけんなと。わしは不眠不休で鼻血噴き出しながら黙って働いとんねん、わしのほうがしんどいんじゃ、いちいちアピールしてくんなと。プロフィールの好きな女の子のタイプの欄に「健康な人」って書きたくなるぐらいのアレでした。まあ、心が狭かったというか、僕にも、私を見て見て症候群に罹患していた時期はちゃんとあったんだなと自分で安心してしまいます。

 

これからさらに年を重ねていくにつれ、いわゆる体調が、今よりも良くなることなんてなくなっていくと思いますし、毎日毎日、ここが痛い、ここがしんどいと思いながら生きていくのは仕方のないことなんだろうと諦めもしていますが、脳みそだって、体の一部ですもんね。経験則で物を言うのは全然好きではないんですけど、どんな天才的な人も、老いるとつまらなくなります。経験上。こいつすごいなと、ひねくれた寂しい人間である僕が認める数少ない人も、年と共に確実に面白くなくなりました。これは無常であると淡々と受け止めるしかありません。そもそも僕は彼らが作るものがすごいと思い、すごいと思わせてくれたことに感謝しているのであって、本人が今、面白いのか面白くないのかは、どっちでもいいことです。面白くなくなっていることは本人が一番分かってると思いますし、本人が一番発狂しそうなぐらい焦ってるはずです。そうやってシャブだの薬だのの話は出てくるわけですもんね。どうしようもない。こういう衰えからくるあせりが全く無いという人は、本物の天才か、そもそも最初から面白くない人のどっちかですから。ちなみに僕もあなたも天才ではありません。



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このエントリーは、

ルマガ 山本山本佳宏『二十一世紀の未読』

本日配信分の一部を抜粋したものです。

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