例えば音楽聴いたりライブ行ったりするのがお好きなんですよね?

例えばアイドルとかミュージシャンを追っかけ回すのがお好きなんですよね?

例えば映画を観て批評めいたことを話したりするのがお好きなんですよね?

 

これらは「趣味」なんでしょうか、と問われれば、そんな軽いものじゃない、ノーライフ的なことだとおっしゃる方はいると思われますが、軽重は各自の裁量で勝手に自認していればいいのであって、音楽鑑賞とか映画鑑賞とかスポーツ観戦とか、それらは古来より趣味の欄に書く代表的な趣味とされています。



 

さて、いわゆるサブカル的な意味合いを一旦置いといて考えると、例えばかつて男は、週に一度は必ずレンタルビデオ屋に通って紳士の暖簾をくぐり、アダルトビデオの荒波に漕ぎ出して、ひとつなぎの大秘宝を求め航海していたわけですよね、海賊として。そこには何の嘘もゴマカシもない、この世でただ一つのユートピアがあって、僕たちの内臓は雲の隙間から優しく届く天使の吐息に剥き身で晒され、自分が心から欲するジャンル、欲するシチュエーション、欲する顔、欲するスタイル、欲するパッケージと恐ろしいほどの素直さで向き合った。誰もが。単体モノと単体モノの間に獣姦モノをこっそり挟んでレジに行くという、もはや何がしたいのか分かんない無軌道な大冒険すらこなしてきたはずです。時は流れてそれらはネットでいくらでも無料で探すことができるようになり、男たちの冒険は形を変えて続いているわけですけれども、さて。

こんなにも夢中になることができることを、こんなにも真剣に、苦労を厭わずに、日々繰り返し行い、これからも行うであろうことを、僕たちは、「趣味」だと言ったことがあったでしょうか。いわゆるサブカル的な意味合いを一旦置いといて。

 

それは、趣味ではなかったはずなんです。趣味とは呼ばなかったはずなんです。

恥ずかしさから? いえ、別に恥ずかしくはないのです、倫理や道徳に抑えつけられて死んでしまうような性欲は性欲ではありません。倫理からのプレスによってグニャグニャに歪まされ訳わからん形になってしまった欲の、その結果の形をさえ、僕らは楽しんできたはずです。それはともかく同様に、僕らはセックスを趣味だと宣言してこなかった。どんな趣味よりも頻繁に嗜んできたはずなのに。もちろん恥ずかしさからではなく、そりゃまあ楽しいけど、これは趣味ではないんじゃないかという思いから。その思いはどこから来ていたんでしょう。

 

 

さて浅はかな前段はすっかり忘れていただいてここからが本題なのですが、薄い本あるじゃないですか。成人向けの同人誌。あれ趣味なんですか? 一応バカな僕にも、オタクにも様々なジャンルが存在することは理解できているつもりですし、それらをひとまとめにして語るつもりもありません。どんなコミュニティにだって、キチガイも凡愚も一定の割合で必ず存在します。それはどんな気取った共同体であっても同じです。




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このエントリーは、

ルマガ 山本山本佳宏『二十一世紀の未読』

本日配信分の一部を抜粋したものです。

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