街ですれ違う人はかなりの割合で僕をチラ見します、正確に言えば僕の髪の辺りをチラ見します。

 

これは当然僕がかっこいいからではありませんで単に髪の毛の色が変だからなんですが、人から見られるのが苦手なもので、「いやいや金髪なんか今日日、掃いて捨てるほどおるやろ、何が珍しいねん見るな見るな」と理不尽なことを思ったりしてしまいます。しかしよくよく考えてみれば、珍しいから見るのではなくて、いい年こいた男が下品なオカマみたいな汚い身なりをしているから、眉を顰める意味で見ているんですよね、きっと。

 

金髪やめればええがなという話はともかく見られるんですがチラ見です一般的には。それが齢を重ねるごとにチラ見ができなくなるのかしなくなるのかは分かりませんが、ジーっと、見るようになる。

サッと見てサッとやめる、みたいな反射神経が鈍っているのか、お前何見とんねんコラと因縁をつけられる危険察知能力が鈍くなっているのかマジマジと、赤の他人である僕を見つめてきます。アホなんでしょうか。

 




やめてください。やめてください。僕本当にそういうの苦手なんです。人に見られるぐらいなら死んだほうがマシなんです。

そんな叫びも当然届かず、先日も電車の中で、向かいに座っているおじいさんが、僕をジーっと見ているのに気づきました。

やめてください。やめてください。すごい見てる。すごい見てる。耐えられない。鼻毛出てますか? 鼻血出てますか? 動物霊が憑いてますか? まだ見てるじゃないですか、やめてください。

あまりにも長い時間、おじいさんに見られ続け、我慢できなくなった僕は、最終手段に出ました。

 

僕も見る。

 

穏やかに陽の差し込む午後の電車内。黙って見つめ合う老人と私。将棋かな? こんなのおかしいよ。

世の中の顔色の悪い金髪の35分は下手したらダガーナイフで人刺し殺しますからね。そんなやつに見つめ返されたら即座に顔を背けなきゃいけない。無謀すぎますよおじいさん。

 

30秒。

 

長い。

 

どんだけ見てくるんですかおじいさんよ。むしろそこまで見たあげく目を背けた意味が分からんわ。飽きたか。飽きたんか。おい。

 

「こら。よそ様の顔をジーっと眺めるなんてはしたないことをしてはいけませんよ?」という、母のようなぽたぽた焼きのような気持ちで諭すつもりで見つめ返しましたのに。全く効果がありませんでした。

 

やっぱり電車は嫌いだと思いつつスマホに目を落としましたところ、何か隣からも視線を感じる。チラ見すると綺麗なOLさんです、別に僕のことを見ているわけでもなさそうで、あら嫌だ自意識過剰かしらと頬をローズピンクに染めながら再びスマホに目を戻しました。

 

関係ないですけどスマフォって書くのダサいからやめてもらえませんかね。あれ見るたびにアメフトのことをいつもアメフットとしっかり発音する母親を思い出してしまいますので。不躾で大変恐れ入りますが今すぐスマフォやめろ。

 

 

閑話休題。

スマフォをクリクリしておりましたところ、隣のOLさんがiPadをカバンから取り出したのが目に入りました。よくは見えませんが、どうやら服の通販サイトみたいなものを眺めているようです。

あらー。何かいかにもって感じでイイですわねー。と思っていましたがパチン。iPadしまう。え? 3分も見てないですけど、もうしまうの? 関西弁で言えばもうなおすん?

でもまあ、何かをチェックだけしたかったんだろうな、何か覗き見したみたいになってすみませんと思いスマホに戻ってクリクリしておりましたがやっぱり。どうも隣がこっちチラ見している気がする。いや気のせいでしょ、そんなわけないと気にしないふりをしていました。

 

OLiPadをしまったと思ったら今度はスマホを取り出しイジり始めるやいなやあっという間にイジるのをやめて今度はイヤホンをスマホに突き刺し音楽を聴き始め数分でイヤホンを外してカバンにしまいうつむいて寝始めたのかと思ったらまた顔を上げてiPadを取り出しぶるううっぅうううううううわああうおおおおあおおおおおあああああああああああ!!!!!!!!! 君は何をしておるんださっきから!!!!!!!! 落ち着きなさい!!!!!!!!

 

いや別になんの被害もこうむってないんですけど。向かいのおじいとは違って。ただ視界の隅にチラチラ入ってくるのが気になってしょうがない僕が悪いんです。横向いて顔見ることもできませんし。

 

やっぱり電車嫌いですわ。




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このエントリーは、

ルマガ 山本山本佳宏『二十一世紀の未読』

本日配信分の一部を抜粋したものです。

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