人を殺してそうな顔と言われて久しく、僕も全くそう思いますので全く不快ではありません。「人を殺していないことに違和感」と意識高い違和感ババアにツイートされる日も近いのでしょうがそんなことはどうでもよくてですね、夜道などではむしろ申し訳なくなるほどには自覚しております。

 

家への帰り道、少し後ろを歩く僕を何度もちらりちらりと不安げに振り返り、ついには小走りになって遠ざかって行く女たち。私の上を通り過ぎて行った男たち。そうそう、それぐらい警戒するぐらいのほうが安心だ、何かあってからでは遅いのだからお逃げなさい、お嬢さんお逃げなさいと一応鷹揚に構えてはみるものの、やはり奥歯には不快感がのカスが残っています。

誰がお前なんか襲うか! と心の中で叫び残りカスを飲み下したのち、僕は考えました。やっぱりちょっとは傷つくので、もう少しくらいは、人を殺さなさそうなオーラを纏いたいです。


 

どれだけかわいらしく、あるいは爽やかな格好をがんばってしてみても走って逃げられてしまう。この前なんか若妻がベビーカーをボブスレーのごとく押してカーブを曲がって行きましたから。

そんなイカ墨色の感情に襲われたことのあるブサキモは僕だけではないはずです(ビュッと落涙)

 

しかしご安心ください。僕はこの、待ち針で手のひらをチクチクと刺され続けるような心の痛みの蓄積から解放される術を、先日偶然発見することに成功いたしました。もう大丈夫ですみなさん。




逢魔が時、その路地には僕と、向こうから歩いてくる若い女性の二人しかいませんでした。

 

いつものごとく、遠くから僕の存在を視認したその女性は、瞬時に不安の色を顔に浮かべて道の隅に寄りました。またかい。誰がお前なんか襲うか。少しイライラしながらも、早くすれ違って彼女の不安を取り除かねばと歩みを早め、彼女はこちらの様子を横目で伺いながら徐行を続けていたその時、私は見ました。彼女の顔に安堵の色が浮かぶ瞬間を。「あ、こいつは私を襲ったりしない安全な人間だ」と確認ができたかのような安心。

 

彼女の目は、僕の顔でもなく服装でもなく、僕が手に持っているスターバックスのコーヒーに向けられていました。

 

 

スタバのコーヒーを飲みながら街を歩くような男だから、多分怪しい人ではない。

 

たった一人の女性の反応だけで全てを語ることはできませんがしかし、僕の直感は激しく鐘を鳴らしていました。

スタバのコーヒーは人に安全な人間であるアピールになりうると。

 

ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、僕は権威やブランドに群がるのが大嫌いですし、スタバなんかどうでもいいのです、好きでも嫌いでもない。ただ今回のように具体的な悩みを解消するツールになるならば使わない手はないかもしれません。

確かに、スタバ紙コップを持ちながら歩いているやつは、缶コーヒー飲みながら歩いているやつよりも怪しくなさそうです。

 

漂っているのはどんな雰囲気なんでしょう。オシャレに気を遣っているような雰囲気。あまり金に困ってなさそうな雰囲気。性欲が薄そうな雰囲気。体毛が薄そうな雰囲気。それなりに人生に幸せを感じているような雰囲気。

 

実際にはトール下水ラテのような存在である僕にさえ数百円を出せば買われて飲まれてしまうわけですからそんな雰囲気などあってないようなものですが、世間一般的には、ロト6売り場並みの珍しさしかなくなってしまったスタバにぶら下がりたい方々はたくさんいらっしゃいます。せっかくですからそれを利用したい。

 

さらに自前のタンブラーでさらに上質な毎日を楽しんでいる雰囲気を醸し出せるかもしれないとお考えになるかもしれませんが、タンブラーはかえって危険です。遠目から見ると、家で沸かした麦茶を水筒に入れて道すがら飲んでいるおっさんのように見えてしまうリスクが伴います。キモい(確信)

水筒持ち歩くおっさんは女を襲う。スタバの紙コップを持ち歩くおっさんは女を襲わない。抜群の印象論ですね。しかしなりふり構ってはいられません、こっちも必死なんです。

 

可能であれば、スタバの紙コップを両手で持ちアチチチなんて小声で言いながらフウフウしながら飲んでみるとさらに吉ですよね。両手が塞がっているやつは女を襲わない。コップ両手で持つオカマみたいなやつは女を襲わない。これはかなり上級者テクのはずです。逃走される確率はぐっと下がる。念には念を入れてこれぐらいのことはやっておきたい。

 

そりゃあ白くてデカいヘッドホンで音楽を聴いて眩しげに空を見上げているとか手が隠れるほど長いカーディガンの袖をブラブラさせてふえええーんて言うとか蝶々を追いかけてるとか、道行く女性の警戒度を下げる方策は他にも色々あるにはあると思いますが、こっちも守らねばならぬ漢のプライドは一線として持っております、不特定多数の女性に怖い思いをさせないためとはいえ、そのためだけに四六時中、白痴のオカマのふりをして街を練り歩くわけには参りません。

 

歩いているだけで婦女子が足早に逃げて行ってしまうという不審者系男子のみなさん。これからはスタバの時代です、スタバの空の紙コップを常備して手に持ち、時おり口に当てながら歩きましょう。きっと女性方も今までよりは少し、歩みを緩めてくれるはずです。スタバ最高!




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このエントリーは、

ルマガ 山本山本佳宏『二十一世紀の未読』

本日配信分の一部を抜粋したものです。

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