あなたの未来には、二つの道しかない。

「交通事故で死ぬ未来」と、「交通事故では死なない未来」。この二つ。

この二つ以外に道はありますか?ないですよね。

 

もし、あなたが将来、交通事故で死ぬことになっているとすれば、シートベルトを締めていようと交通規制を守ろうと、どれだけ神経質に運転したところで、交通事故で死にます。

一方、あなたが将来、交通事故では死なないのだとすれば、別にシートベルトをしていなくても猛スピードを出しても信号無視をしても、死なない。




と、いうことはですよ。交通事故で死なないためにアレやコレやを頑張るのは、あなたの未来がどちらの道であろうとも無駄である、という結論になりますよね。予防したって死ぬと決まっているなら予防は無駄。予防しなかろうと死なないと決まっているなら予防は無駄。意味がない。やめとけやめとけと。

 

何だか合っているように見えますけど、この理屈に納得してあしたから首都高バトル始める方はいないでしょう。

「アホか、交通事故で死ななかったとして、それはシートベルトしてたおかげの可能性だってあるだろ!」

 

マイケル・ダメットというイギリスの大御所哲学者がいまして、『真理という謎』という本の中で書いていた以下のような例え話があります。そんなに難しい本じゃないですからご興味ある方は読んでみてください。

 

 

封筒を開ける前に、いつも「チッ!」と舌打ちする習慣を持っている男がいました。「何でいつも開ける前に舌打ちするの?」と尋ねると、「開封前に舌打ちしておくと、封筒の中に請求書が入っていたことがない。だからするんだ」と答えた。

 

 

舌打ちおじさんは、差出人が封筒の中に請求書を入れるのを止めさせるために、未来で「チッ!」と言っているわけですよね。いや、届く請求書が嫌なものであるのは自営業をしている限り共感果てしないものですが、それにしたってこれは、ただのアホなおっさんのゲンかつぎじゃないですか()

…と笑っていて気づく。

 

さっきと逆じゃん。

 

原因があって、結果がある。

原因が先で、結果が後。

だから、手紙が届いたあとで舌打ちしても、封筒の中身に影響を及ぼすことはできないはずだ。

舌打ちは『原因』にはなれない。

 

すでに決まっている未来にたいして、今の自分が何をしたって意味がないと、さっきの『シートベルト不要』論者は言った。

それと同じことを、今僕たちは、舌打ちおじさんに言っている。

 

どっちが正解なんでしょうね。運命って何なんでしょう。時間って何なんでしょう。

原因は本当に、結果よりも先にあるんですか。過去にないといけないものなんでしょうか。

 

…的な話をですね、どこかで読んだのを思い出しました。

時間が過去から未来へ一直線に矢印になっていて、僕たちはそのレールの上を列車に乗って走っている、という考え方は違うだろうと僕が思っているという話は、もう何度も各所で書いておりますのでご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、そういう考えですので、前述のお話に反応してしまいましたね。


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このエントリーは、

ルマガ 山本山本佳宏『二十一世紀の未読』

本日配信分の一部を抜粋したものです。

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