■■ マ行で鳴くトカゲ ■■

 

ミャーミャー。モー。メエエエ。おいおいどうぶつの森か。ウンコ踏んどるがな。ウンコ避けた場所にもやっぱりウンコあるがなこの村。

 

なぜ猫はミャーと鳴き牛はモーと鳴き羊はメエーと鳴くか。

哺乳類だからです。

なぜ赤ちゃんはンマンマ言い出し、パパじゃなくてママを先に呼ぶのか。

哺乳類だからです。



 

哺乳類には何があるか。唇です。

母から授乳する際に乳首を噛みちぎらないために全能の神ゼウスは私たち人間に唇を授けました。

そういえばゴッドオブウォーっていうゲーム面白いからやってみてください、ギリシャの神々が人間にボコボコに殺されます。

ゴッドオブウォーはどうでも良くて唇ですよね。

マミムメモは『唇音』と呼ばれます。唇を合わせたり離したりしないと出せない音。哺乳類の音です。

だからこの世に、『ムメメメメメ』とか『モミミミミミ』とか鳴くトカゲは存在しないわけですよね、ヤツらには唇がございませんので、『口蓋音』と呼ばれるカ行で鳴くわけですクケケケケケケ。

 

一方で、我ら人間様が口蓋音を出せないのかと言われたら出せるわけですよね。下等なトカゲどもとはランクが違います。

 

おいおい。爬虫類様をバカにしとんのかと。こっちは恐竜時代からこの辺仕切っとんねんと。言われかねませんけどもじゃあ人間様はどういう時にカ行を発するのかと言うと。

 

キャ―――!!!!

グアアアアアアアア!!!!

キイイイイイイ!!!!!

ゲエエエエエッ!!!!

 

ネガティブなアクシデントに遭遇したとき。まあ例えば死ぬときですが() 僕らは口蓋音を発します。

こういうところからして、カ行は、日常的に生命の危機に晒されている、わりかし原始的な本能に根差す音と言えるかもしれません。のんびり乳吸ってる場合やあれへんと。

 

知能が発達し環境に適合し、より生命の維持を上手にできるようになった哺乳類にとって、唇はシンボリックな存在でございます。

 

オマンマ。ンマンマ。ウマイ。

mammaはおっぱいのことです。momはお母さんですよね。

母。メシ。美味しい。おっぱい。

母から生まれ母から愛と乳を授かって命をスタートする、人間、というか哺乳類の根源的な感情とか欲望とかが、マ行の唇音には宿っている、という見方ができるかもしれません。

 

 

例えば僕が、誰かがストレスが最高潮になったとき発する奇声をセリフとして書くとなったとき、「ンマンマンマ―――!!!!」と叫ぶ人間は、DNAとして基本的に存在しない、ということを知ってて書くわけです。「クケケケイイイイイイイ!!!!」は、語感としては面白いかもしれないけど人間の構造上、あり得る奇声です。

この二つはどちらも、「変な奇声」「意味分からん叫び」として表面上、お客さんには受け取られますが、彼らの感知できない無意識下に働きかける効果は全く別物なんですよね。もっと言えば、これは、その場でのお客さんの反応では絶対に分かりません。

 

ということとかをですね、知ってるのと知らないのとで、どういう差があるかというと、差はないんですよ。ないんかい() ないんです。仕事においては結果が全てだから。結果的に同じ答えを出すなら効果は同じなんです。継続的に職業にするなら、たった一発のメクラ打ちホームランをいつまでも自慢している余裕はないので、次の打席も次の次の打席もホームラン打つために練習が必要であるというだけです。


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このエントリーは、

ルマガ 山本山本佳宏『二十一世紀の未読』

本日配信分の一部を抜粋したものです。

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