docomoさんへ

 

 

あなたに出会ってもう13年が過ぎました。

初めて会ったときのことを覚えていますか。

上京したばかりの僕の携帯電話はJ-PHONEでした。

僕の大学生時代はど真ん中に震災があって、結果関西には爆発的に携帯電話が普及しましたよね。

友達がいない僕にも彼女ができて、ポケベルを持ったりPHSを買ったりして、

それでもケータイは憧れでした。大人の持ち物だった。

 

そんな僕がようやくケータイを手にして、嬉しくて、大人になれたような気がして、それでもdocomoさん。

あなたには手が届かなかった。

 

あなたは大人の象徴でした。

値段が高い。通話料も高い。ガキの僕にはとうてい払えない。

バリバリ働く会社員やまっとうな社会人のステータスシンボル。

 


 

いつかあなたを。いつかあなたを手に入れたいと思い、

東京で仕事をしていくという決意のどさくさにまぎれて、あなたを買いました。嬉しかった。

もう僕はダサいJ-PHONEなんかじゃないんだ。docomoなんだと。

 

movaとかFOMAとか、着メロとか着うたとか。写メとかメールとか、i-modeとか。

ストレート型とか二つ折りとかスライド式とか。

Nが人気でなかなか売ってなくて仕方なくPにしたりFにしたりとか。

docomoショップの受付は腰が低いくせに対応は殿様だったりとか。

 

どこに行くにも一緒だった。東京での慌ただしい生活は、あなたとともにあった。

どこでもつながる。docomoでつながらないなら仕方ないと思えた。

 

D502iか。懐かしい。昔は三菱が好きだったな。

アンテナ内蔵型とか登場した時はビックリしたな。そんなんでつながんのかって。

N2701movaFOMAの一体型だった。

僕みたいに誰からも電話かかって来ないヤツがなぜ二つのネットワークを契約したんだろう。mova解約がすごく面倒だった。

F902isは名器だった。カメラも操作も見た目も好みだった。ずっとこれを使っていたいと思っていた。

N-04A、アマダナケータイはすぐぶっ壊れるしボタンは押しにくいしでイライラしたが、見た目がカッコ良くてずっと使ってた。

 

 

東京での僕の出会いと別れを、あなたは全て知っている。

ここで出会ったたくさんの人が、あなたに電話やメールを寄こして僕と話し、そして二度とかけて来なくなった。

誰よりも長い時間僕と触れ合ってすごし、あなたがいないと不安になった。

そしていつしか、僕にはあまり必要ではないものになった。

 

 

ポケットにつっこんで尻で踏みつけてごめんなさい。

何度も何度も道に落としてごめんなさい。

未読メールとか留守電15件とか溜めたまま放置してごめんなさい。

ダサいストラップ付けてごめんなさい。

 

 

docomoさん。お別れです。

13年間ありがとう。僕を大人にしてくれてありがとう。

 

あなたが嫌いになったわけではありません。

ただ、別れる理由がないから別れなかっただけでした。

僕たちはもう、違う道を歩きはじめているのです。

 

あなたと過ごした日々は、ナンバーポータビリティで持ち出すこの電話番号に刻まれています。

刻まれているから、もう、あなたのことは忘れます。

さよなら。

 

 

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物に執着とか愛着とかを持てないんですよ。どないやねんと。

幼少期からそうだったわけではないと思うんですが、徐々になのかな。

コレクション欲も薄いしガンプラとか作ったことないしあんまり少年らしくないですね。

だって、物ですよ?人じゃなくて物ですよ?どうだっていいじゃないですか物なんて。

飽きたら使わないし、なくしたら買い直すし、古くなれば捨てます。

物に大切な思い出が百歩譲って刻まれていたとして、別になくなったって困らないでしょう。

そんな外部デバイスにしか蓄積できない、スイッチを依存するような記憶は、

本体が要らないって言ってるのと同義ですから、どんどん手に入れてどんどん捨てればいいと思ってます。

いろいろ考えて物をなかなか買わない、というのも、執着のひとつの形ですよね。

節約とかエコとかロハスとかシンプルライフスタイルとかから強烈に漂う欲の香りも、それだと思います。

「物を大事にしないから金が貯まらないんだ」と言われても、それは金を貯めたい人の論理であって、僕は自分の手元に金を滞留させる欲望がないのです。

 

手に入り手から出て行く金額が大きいか小さいかなんて、どっちでもいい。

 

 

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このエントリーは、

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本日配信分の一部を抜粋したものです。

 

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