♪僕には 夢がある 希望がある そして 持病があるー

 

お前それ下痢が止まらず寝転んでるブッダの前で同じこと言えんの?

 

 

恥ずかしながら僕にもささやかな夢と希望と持病がありまして、希望と持病についてはどっちでもいいんですが僕の夢は、「さんざん飲み食いしたあげく、最後に赤だしとご飯で〆る」というものです。

 



 

僕がなかなか太らないのには理由があって、それはただひとつ、量を食っていないからです。

「食べてるんだけど太らない体質なんだよねー」というのは、「そんなに食べてるわけじゃないのに痩せない」というのと同じく、わりとウソです。一応、病気の人もいますから全部ウソとは言い難いですけど、わりとウソです。

 

毎日毎日ダラダラ山盛りアホみたいに食っとるから痩せないのであり、全然量食ってないから太らないのです。

元阪神タイガースの金本選手は、引退して、もう無理してメシ食わなくていいんだと思うとホッとした、と言っていましたし、ダルビッシュ投手も、食べるのが好きではないが、体重を維持するために無理やり詰め込んでいる、辛い、と話していたりします。彼らは体が資本のプロ野球選手ですから、余計に大変でしょうね。食べたくもないのに食べなきゃいけない。僕なんかだと食べたくなければ食べない、で済んでいますけども、とは言えやはり、「基本的に食べるのが好きじゃない、しんどい」という感覚はマイノリティでもありますのでなかなか理解されづらいものがあります。

食物を頬張りながら「んおいすぃー」と首を張子の虎のようにフルフルと揺らす片山右京のごとき女に、プロストのような氷の視線を送ってしまうのも、食欲を楽しめない自らを悲しんでいるからにほかなりません。もっといっぱい美味しく食べて体重を増やすことへの憧れは、世の中の痩せたい願望と同じぐらいはあるのです。

 

 

以前にも申し上げましたが、僕は自らONOFFのスイッチを破壊してしまいましたので、みんな大好き『プライベート』の意味が全く理解できません。僕らみたいなもんに、パブリックな時間なんて存在するわけないじゃないですか。24時間プライベートのまま陰に隠れて死んで行く便所コオロギのような僕たちは、ONだのOFFだの考えなくてよいのです。

仕事しながらメシを食うし、メシを食いながら仕事します。遊んでいる間じゅうずっと仕事のこと考えるし、仕事している間じゅうずっと遊びのことを考えます。

 

その結果なのかどうかは分かりませんが、僕は食事を完食する前に、食べることに飽きることがたびたびあります。めんどくさくなってきます。他のこと考え始めてしまうと言いますか……飽きないですか? 空腹の不快感がないなら、もう他の事したい。酒の席も同じです。飲んで、酔っぱらって、面白くない話を誰彼かまわず大声でし、面白くもないのに大声で笑い、酔ってないとできない本音の話があるとか、酔ってハメを外すのも大事な時間だとか言い訳をする。

だったら飲んでない時にくそサムいお前は今日から24時間飲酒せよと。許すから。すごい面白い行動とか本音の話とかできるんでしょ? 酔ってたら。じゃあ飲んどけずっと。肛門にアルコール注射突っ込んどけよと。

もちろん、酔っぱらってつまらない話をしてしまう自分への恥も同時に感じておりますので、僕は酒の席もあっという間に飽きます。早く酔いが醒め明晰な頭で面白いことを考えたい。

 

 

もともと胃下垂ぎみで食が細い僕がこのような生活を送っておりますとさらに胃は収縮してしまいますけども腹。腹がパンパンに出てるおっさんいるじゃないですか、エイリアンに卵植えられたみたいな。彼らを見ていると、それでもふと、憧れを感じてしまうのです。

 

恥ずかしながら僕も、焼き鳥を食べに行ったり、串揚げを食べに行ったり、一人前にしてしまうことはあります。

すんごい腹が減っていて、よーし今日はすごい量食べちゃうぞーとかテンション上げて注文をスタートしても30分ぐらい食べると、「まあ、うん…何か、もう……ふー。えーっと……まあ…すいませんお会計してください」

何なんでしょうかこの草食系は。さっさと家帰って寝転んで反芻でもしとけよ。

何か天井とか見上げ始めている僕の横では、団塊ぐらいの腹ぱつんぱつんフェスのおっさんが、お姉ちゃんを連れてバクバクと串から鳥を食いちぎっています。僕が来るよりも前からいるのにも関わらず、ガンガン注文し、ガンガン酒をあおっている。顔が赤黒くむくんでいます。僕は早くも酔いを醒ますためにウーロン茶を飲み始めて飲み終わるところですがおっさんは、「すいません、赤だしとご飯ちょうだい」出た―――――!!!!! おっさんのフィニッシングムーブ!!!!! 赤だしとご飯!!!!! さんざん飲み食いしたあげくの赤だしとご飯!!!!!! 「いや、ご飯やめて…卵かけご飯にしてくんない?」出た――――!!!!! ご飯だけでは飽き足らず卵かけご飯!!!!! 腹いっぱい飲み食いした腹に赤だしで流し込む卵かけご飯!!!!!!! 赤巻紙白巻紙黄身がすすすすす好きだ!!!!!!

 

勝てませんわ。何でおっさんってあんなに死ぬほど飲み食いしたあげく赤だしとご飯で〆られるんですか? あの腹の中はどうなってるんでしょうか。胃袋の中に人面瘡でもできてるんですか。

僕は一度でいいから、さんざん飲み食いしたあげく、〆に赤だしとご飯を頼むような豪気な食い方をしてみたいのです。となれば逆算で、赤だしとご飯ありきの注文構成を組んでいけばいいのですが、だとするとウーロン茶⇒スティック野菜⇒赤だし⇒ご飯的な、年貢持って行かれた百姓の晩飯のような哀れな結果になりかねません。

 

ああ、いつか僕は、あの赤黒いおっさんのように卵かけご飯で〆ることができるのでしょうか。夢です。希望も持病もありますが、夢です。僕に40歳を過ぎての夢があるとすればそれです。






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このエントリーは、

ルマガ 山本山本佳宏『二十一世紀の未読』

本日配信分の一部を抜粋したものです。

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