あるある

 

グングングング―――――――ン!!!!!!僕の心の中の節くれ立ったマタギのおじいちゃんの手のようでなく!!!!!!!ささくれだったマタギの妻のおばあちゃんのような手の!!!!!ような部分がささくれ立ってグングング―――――――ン!!!!!!あるあるネタ大っ嫌い!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!共感誘うだけのヤツ大っ嫌い!!!!!!!!!!芸人さんのネタは頑張って考えてるだろうからあんまし何も言わないけども居酒屋で「私だけでしょうかー」SHIRUKA汁か!!!!!!!!!!SHI/RA/N白ん!!!!!!しろんじゃなくてしらん!!!!!

 

『広告』は、単なる業務ではない。

あなたの心が躍動して体から飛び出す叫びそのもの。ラブレターは広告だ。ラブソングだって広告だ。このCD超良かったよって友達に貸すのも、もちろん広告だ。あなたに届いてほしいと願い、肩も壊れんばかりに空に向かって投げる、この糸が広告だ。

ラジオ風とロックを発信基地としてスタートしたムーブメント、『ギャングスター・プランナー』についてかつて僕は確かにそう言った。

自分の行為に対しての共感を得たいから周囲に伝える。それも確かに広告。

自分はこんななんですけど誰か同じ人いませんか?共感してくれたり賛同してくれたりする人はいませんか?そんな問いかけはわりと本能に近い部分から出てくる欲だと思うし逆に「えっ?私だけ?うそーやっぱり?私変わってるってよく言われるんだよねー」とかいまだに言っちゃう人がいるのも分からないではないで寿司。

「私、切った爪の匂いクンクンしちゃうんだよねー」あるあるある!!!!!そんなもん中国人と同じ数ぐらいのヤツがやっとる!!!!!!

「俺、学校の先生を間違って『お母さん』って呼んじゃったことがあってさー」あるあるあ、るあるあ、るある!!!!!!!そんなもん左利きのヤツと同じ数ぐらいのヤツがやっとる!!!!!!いちいち問いかけんでよし!!!!!!!!!!!

 

一方で、共感ほしいとか抜きで不安になるような出来事が起こってしまうこともあります。

僕物心ついてからずっとなんですけどエレベーターが来るのををドアの前で待つじゃないですか、あの前に立った瞬間、体がグイーンと揺れて浮揚する感覚に陥るんです毎回。待ってるだけなのに乗ってる感覚。足元からグイーンと来ます毎回。どのビルのどのエレベーターでもなります。ちょっとヨロけるぐらいの。10代の頃から不安というか謎というか、エレベーターが出してる電磁波みたいなものを受信してんのかとかずっと思ってて、大学で建築工学みたいなのを専攻してるヤツのスネをビール瓶で殴りながら聞きました「こういう感覚が常にあるんですけどコレって科学的に解明されてるんですよね?」「いや、気のせいちゃうか」マジか。あるあるネタであることを望んだのにないないネタか。マジか。ホントに他にはいないのか。俺は死ぬまでエレベーターを待ちながらグワーンってなりつづけないといけないのか。共感とか科学的根拠とかほしかった。しかも広告にもなってないどうしよう「じゃあ、今日転校してきたみんなの新しい友達を紹介するよー山本佳宏くんです」「ははははじめまして山本といいます。エレベーターを待っているときいつも足元がグワーンとなって立ってられません」ないわー。陰惨なイジメにあうわー。上靴の中にマヨネーズ塗られるわー。どなたか科学的にもしくはエセ科学的に証明していただけないでしょうか。

 

物心ついたときから系で言うともう1個あって、僕物心ついてからずっとなんですけど、電車に乗って外の景色を眺めてると必ず忍者が現れて屋根から屋根をスポンスポン飛び跳ねながら電車と完全に並走しててその身のこなしの見事さにずーっと忍者を見てしまってて誰か他に電車忍者を見たことある人いねーがーと思って包丁振り回して不法侵入して探してたんだけどいなくて、ちょっと怖いなーと思い始めてたんだけど編集家の竹熊健太郎さんが電車と激しく並走する忍者を妄想して暇をまぎらわすと書いてたのであー僕のも妄想だったのか。見えてたんだけどなー。三頭身ぐらいの。深い藍色の装束の。どこか幼さを残しながらも鋭い目つきの。あいつ速かったなー足。妄想かー。安心と同時に僕の大事な忍者が掌から砂金のようになってこぼれていってしまった寂しさもありますが妄想かー。電車忍者。




ないない

 

人と感覚や想いを共有する気持ちよさの一方でスカされた瞬間の打撲の仕方はハンパない。「恋をするとドキドキするよね」「いや別に?」ストーン!コーンコーンコーン!側頭部アスファルトでバウンドしますわな。共感と独自性の狭間でブルブルと震える『ないないネタ』っつーのは広告表現にも関わってくるという件について。

 

「私、ツラいときに無意識に数字を数えています」「口に出して?」「口には出しませんがふと気付くと心の中で」「気をまぎらわしてるってこと?」「分かりません。でも数字を数えてる自分に気づいて『ああ、私今、ツラいんだな』と逆算で気づくこともあります」「最大でどの辺まで数えんの?」「覚えてないですけど、100はないです。二桁まで」「へー、やったことないわー」

…という20代女性の『ツラいときの数字カウント』に共感するかたはいらっしゃいますかー?僕は全然共感はしないですけどもありえる話だなとは思うし例えば映画とかで痩せたブル中野みたいな女の子が窓の外を見ながら数字を数えてるシーンとかあったら良い表現だなーとか思うかもしれないけど、それを『あるあるネタ』としての共感で捉えてるかどうかっつーのはまた別問題でブルブルと震えますけども痩せたブル中野である理由をまず先に言え。

 

「僕、クラスメートとか家族とかが、突然宇宙人だとしか思えなくなる時があるんです」「はあ」「見た目は変わってないんですけど、中身が宇宙人になってるってことに気付くんです」「気付いたらどうすんの」「まあ、信用できなくなりますね」「宇宙人だしね中身」「はい」「何か向こうは変なことしてきたりするわけ?」「特別に何かをしてくるわけじゃないです」「でも中身が宇宙人だと」「はい」「中身が宇宙人になったら、ずっと宇宙人のままなの?」「宇宙人じゃない日もあります」「どないやねん」

…という20代男性もいたりするんですけど共感できるかたはいらっしゃいますかー?つーかあるあるネタとかないないネタ以前にこんなことマジメな顔してしゃべってるお前大丈夫かとしか思えなかったですけども中身宇宙人。事実として聞いた話はこんなにもハードコアな設定であるにも関わらず映画になった瞬間陳&腐とか言われてしまうことは確実なことも一方では分かってて何なんすかね。

 

 

ネットでもコレって自分だけじゃねーのかという感覚を語り合ったりしてたので首を突っ込んでみた。書き込むのは恥ずかしくてできませんでした。みなさん投稿したり書き込んだり、すごいですね。僕恥ずかしくてホントにできません。ネタでも恥ずかしい。匿名なのはもっと恥ずかしい。何なんでしょうかこの感覚。何なのよ。何だっていいじゃないのよ。結局あんたさあ、私は明け方からセックスのこと考えてるわけでさあ、何回目で許すも許さないもあんたさあ、向こうが許さないんだから1回目からやりたいわよ。すいません途中からマツコ・デラックスが憑依しました。が、もうどっか行きました。

 

『円に沿って素早く動いてる人を想像すると止まらなくなる』

円に沿って素早く動いてる人を想像しはじめるシチュエーションってまずNAN-YA!!!!!!!!!!!!動いてるヤツの国籍を教えてくれ!!!!!!!!あーでもこういうことですか電車忍者。近い近い。感覚近い。『寝ようと思って目を閉じるとトランポリンとか鉄棒とかが出てくる。人が飛んでたり回ってたりして止めようと思っても止められない』っていうのもありましたわ。わりとあるあるネタですね、だとしたら。ずーっとついてくるもん忍者。

 

『携帯が鳴る直前に気がつく』

だいぶあるあるに近いないないですよね。根拠は全くないけど何かエセ科学的にあり得るっつーかたまたまケイタイをチェックしようとした瞬間に電話かかってきて信じ込むパターン多いかもしれないけどお前今日1日何千回チェックしたんやと。そのうちの1回やろと。すごく良いラインのないないですよね。クラスで2人ぐらいはアホみたいに賛同しそうな。

 

『プールのあとの更衣室での着替え中、異常に寂しく気持ちの悪い感覚に襲われる』

あら?分かるけど?すげー揺さぶられるけども記憶?さっきまで太陽の下でチャプチャプしてたのが、突然モワーッとべチャーっとした薄暗い閉所でズルーっと水着脱がなきゃいけないからじゃないですかね。あのテンションの下がりようったらないですね。僕着替えようとしたらパンツなくなってたことがあって、誰か間違って履いて帰ったんだとしたらそいつのパンツ余ってないとおかしいじゃないですか。余ってなかったですね。

 

『怒られている時に、相手を見ていると顔が大きくなったり小さくなったりする』

あら?また?あるよこれ?なんで?ないないネタばっかりだと思ってたのに。あるあるなの?みんなあんの?大きくなったり小さくなったりするよ?子供のころ父親に怒られてエンエン泣いてる時父親の顔はズームアップとダウンを繰り返しはじめてそれが面白くてわざと泣き続けて父親が干し首みたいになるのを眺めてたけどもあれ血圧ですかね?血流グワンと増えて視界が揺れてるんですか。すげービビったり号泣してないと発現しなかった記憶があるんで、もしウンコみたいに怒られる場面に遭遇したら、顔が大小になるのを楽しんでみるのも吉ですがならなかった場合は単なる生ぬるい地獄です。

 

『焦げ臭い匂いを嗅ぐと唇にフワフワしたものが押し当てられたように感じる』

分からん!そろそろ分からんぞコレ!どういうこと?嗅覚と触覚がどっかで紐づいてますか?あ、青少年のみなさん、最近のオッサンどもの間で流行ってる言葉は『座組み』に代わりまして『紐づく』になりましたのでお知らせしておきます。どのオッサンもみんなうれしそうに紐づく紐づく言ってるんで面白いですよ。そんなことより焦げ臭い匂いですが。前も書いたかもしれませんが、僕は石油ストーブの匂いを嗅ぐと風邪を引きます。わりとスイッチオンされたその瞬間から引きます。しかも毎回結構ひどいです。小学生のころは教室に石油ストーブがあって毎冬のように引いてて石油の匂いが怖くてしょーがなかったんですけど、あの匂いのスイッチ感と似てるのかな?フワフワしたものって何だろう。上手に作ったオムライスかな熱っっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

『文字が緑、紫、オレンジ、赤、黄、青などに見える。不思議とピンクは無い』

知らん!!!!!ピンクがないことは知らん!!!!!何これ!黒で書かれてる文字が色つきで紐づいて見えるってこと?僕の中には全くない感覚ですけどいそうだなー。共感覚っていうんですかコレ。こういうかわいくてポップなのって、ホントは見えてなくても「私って変わってるでしょアピール」にもすごい使えそうだしなー。

 

『声が甲高い人の顔が赤紫色のボーダーに見える』

知らん!!!!!!もう分からん!!!!そういうのは分からん!!!!!そしてかわいくさえない!!!!!全部キモイ!!!!!甲高い声ってアレか!!!たかた社長が出てくるたんびにあの顔が赤と紫のボーダーに見えるか!!!!!シャープのアクオスの高画質より顔が気になってしょーがねーだろ5分間!!!!!!魚帽子に隠れたさかなくんの顔もボーダーか!!!!そんなキモイ熱帯魚いねーだろ!いるか!

 

『物を見ると、その風景と共に単語が頭に浮かぶ。風景に合っている言葉から意味不明な言葉まで色々』

あ見えた見えた!富士山だー”カリスマホスト” …すごいねーまだ上の方には雪積もってるよー”カリスマホスト” ……さあ早く湖に行って釣りの準備”カリスマというほどでもないホスト”うるせえええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!今カリスマホストいらんねん!!!!!!!!!!カリスマでもないホストはなおさらいらん!!!!!!!風景に合ってない言葉が強制的に浮かび続けたらあるあるとかないないとか以前の発狂!!!!!

 

『寝ようとして目を閉じると真っ白い部屋が見える。その中に自分が1人で立ち尽くしていて、どんどん部屋が広がっていくような感覚に陥る。最終的に自分は消えてなくなる。落ち込んでいるときは必ずなる』

まあ元気出せよ。

 

 


リアル


社会にはルールがあってモラルがあって、それを維持するためにわりと細部を切り落としたりもする。広告でも番組制作でもそうで、面白さ、斬新さの中にも必ず根底を走る『共通言語』が存在する。熱いお茶を飲むとハーッと言うもんだとか。オバハンは声が大きくて野放図だとか。あまりにもつまんない例かもしらんけども、つまんなくても共通言語を完全に無視することは絶対にない。いわゆる常識を逆手にとって、構図のズレを楽しむ笑いは良くあるけどもズレは所詮ズレであって、破壊でも無視でもない。それをすると、共感してもらえないから。

宇宙人は変な形。もしくは変じゃない形。悲しいから泣く。もしくは泣かない。そのどっちか。

宇宙人を見ると歌ってしまう。悲しいと全身のムダ毛が伸びる。前述のように60億人いれば「ないない」と思うようなことをリアルな事実として自分の感覚に持つ人がたくさんいるのにも関わらず、こういったネタは『意味不明』として処理される。

 

自分にとっては当たり前の事実が、他者にとってはキチガイ沙汰。リアルなはずなのに、リアルだとは思ってもらえない。だから、「たぶん多数がリアルだと思ってくれるであろうこと」をリアルだとしようね、みんな!じゃないと色々やりづらいし!…という呼びかけを、僕らはずっとやり続けてきたはず。そしてほぼそのことに神経を集中して制作をしてきたと言っても過言じゃない。

何かの映画で、「剣道の小手のニオイに性的に興奮する女性がいたら面白いなと思って作りました」みたいなのがあって、そりゃ面白いだろうけどれないけど、「たぶん多数がリアルだと思ってくれるであろうこと」から逃れることはできてない。「いや、私は剣道の小手のニオイを嗅ぐと必ずぬいぐるみを引きちぎります」がリアルではないと、誰が決められるだろう。

 

自分が感じていること、思うことを発信したい、誰かと共有したいという欲望からは逃れることができない。けど、それとセットになって「俺の価値観を受け入れられないお前のことは嫌いだ」がくっついてくることが多々あって、そうなるともう戦争しかないわけで、自分のリアルも、誰かのリアルも、同じリアルとしてこの世に併存していくことが当たり前だと思うし、「そんなヤツおらへんやろ?」とは僕は思わないし、「あーそういう人もいるのかー。いいっすねー面白い」が、1番ラクなはずなのに。

 

大金使ってるんだから、多数の共感を得られないようなもんは作っちゃいけない。というのは、負のスパイラルだと思う。現に番組制作はそのスパイラルに陥って、モチベーションがどこにあったのか、その位置関係すらも分からなくなってる。景気良けりゃ懐も広いが不景気になったらグリンと裏返る。自分が良いと思ってるモノが、はたして何人に受け入れられるか、何人の顧客を創造するか、という順序は、例え客商売であってもエンターテインメント稼業であっても、そして僕らの毎日の生活でも、忘れてはいけないことなんだろうと思う。多様性を受け入れること。そして自分のリアルを投げかけること。お前の中身は宇宙人だな!と言われても嫌いにならないこと。