財布がない。

 

小銭入れはある、鍵もケータイもある、財布がない。

数時間前、家に帰ってきたときに手に財布を持っていたのは間違いなく覚えている。つまり僕はこの部屋で財布をなくした。

 

ファラオの棺桶程度の広さしかない空間でそれは消え、僕は真ん中に立って首を少しだけ左右に動かし、少し膝を折って床に置かれたカバンを動かしてみることもしない。なぜなら僕はいらだっているからだ。