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 美容師の目を盗んでクロスの中に両腕を仕舞ってふわりとしゃがみ、誰にも気づかれないよう床に落ちた自分の髪を一掴み、拾う。髪の匂いは一刹那。汗にまみれた手でいつまでも握っておくことはできない。ポケットに押し込んで持ち帰ることもできない。床に這って鼻をすりつけたい情動を抑えて女は、白いクロスから音もなく手を出し、鼻の頭でも掻くような素知らぬ顔で顔に近づける。